中期成長戦略を説明するルネサス エレクトロニクス代表取締役社長兼CEOの呉文精氏

ルネサス エレクトロニクスは11月2日、2016年12月期第2四半期決算の発表に併せて、中期の成長戦略を発表した。

同社代表取締役社長兼CEOの呉文精氏は、これからのルネサスは、注力市場においては平均市場成長率の2倍の成長率を目指すことを強調。具体的には、おおむね6~7%を狙っていくとした。

また、売上高総利益率(Non-GAAPベース)も従来45%としていたところを、2020年ころまでには、それが実現できることが見えてきたことから、50%へと引き上げるとし、「この5%については(買収した)Intersilとのシナジーなどの活用により埋めていく」としたほか、営業利益率についても、従来の15%という目標は数年の内に達成できるとの見通しを披露。半導体分野の優良企業が達成している20%を、買収によるシナジー効果などを活かすことで達成したいとした。

中期的にルネサスが目標とする財務指標各種。強い部分をより強くしていくことで、この値の実現を目指すとする

さらに売上高R&D比率は、現状の16%程度から、今後、さらに売り上げを伸ばしていくことを踏まえ、1~2%程度の積み増しを図るとする一方で、四半期ごとの業績との兼ね合いも踏まえ進めていくとした。主な投資先としては、自動運転や運転支援関係のほか、産業機器分野でのスマートファクトリ、スマートホーム、スマートインフラ向けマイコン/SoC、アナログ&ミクスドシグナルでは90nmのBiCD MOSプロセスを社内のファブを活用して注力していくとした。

成長に向けた投資の方向性

注力する車載半導体分野について、次世代マイコンとして製品化を進める28nmフラッシュプロセス品について、2017年後半にサンプル出荷を開始する計画であることを説明。他社に先駆けて先端プロセスを活用できているという強みを活かし、確実に商機をものにしていき、シェアの拡大を図りたいとしたほか、高い成長率が期待されるHEV/EVおよびADAS分野に向け、リソースを配置していくとする。

28nmフラッシュプロセス採用マイコンの投入により、競合の引き離しを狙う

一方の産業機器分野などは、上述したスマートファクトリ、スマートホーム、スマートインフラを注目ソリューションと定義する一方で、IoT活用に向け、組み込みAI(e-AI)の強化を進めるとともに、プラットフォームとして「Renesas Synergy」やその上位版となる「RZ/G」を積極的に展開していくことで、新たなビジネスチャンスの創出と、新規顧客の早期商品化の手助けをしていければ、とした。

スマートファクトリ、スマートホーム、スマートインフラという3つの注目プラットフォームに注力するほか、Synergy、RZ/Gのようなハードウェアからソフトウェアまで含めたソリューションベースまで提供することで、さまざまなニーズの取り込みを狙う。ちなみにSynergyは、ARM Cortex-M23/33を搭載する第2世代が先日のARM TechCon 2016に併せて発表されたばかりだが、こちらとRZ/Gは、RTOSを使うのかLinuxを使うのか、というニーズの住み分けを行っていくとする

なお、買収を進めているIntersilについては、すでに独、米、韓の公正取引委員会からはクリアランスを取得済みで、中国も審査が進められている状況にあり、2017年上半期には手続きを終える見通しであるとした。「Intersilとはどういった形でシナジーを出していけるか、といった話を双方向で進めている。単にこちらがあちらに乗り込んでやっていくのではなく、あちらがこちらに来て、一緒にプランを作っていく、といった流れで進めている」とのことで、これにより、自動車や産業機器で、ルネサスの得意とする頭脳部分(マイコンやSoC)とIntersilの得意とするミクスドシグナル/パワーマネジメントの組み合わせが可能となり、よりワンストップに近い状況で高度なソリューションを提供できるようになるとした。

ルネサスのマイコン/SoCとIntersilのミクスドシグナル/パワーマネジメントICなどを組み合わせることで、さまざまなソリューションをワンストップで提供することが可能になるというのが、今回の買収の意義の1つとなる