10月27日から29日まで、アドバンテックのプライベートイベント「アドバンテック 2016 Embedded-IoT Partner Summit」が台湾・林口にある同社のAdvantech Linkou Campusで開催された。本稿では、同イベント2日目に行われたアドバンテックのChaney Ho Presidentによる基調講演の内容をレポートする。
組み込みPC業界の地殻変動
Ho氏は初めに、IoTの伸展に伴って発生している、組み込みPC業界の変化について説明。「CPUチップセットのテクノロジーが多様化し、インテルが以前ほど支配的ではない。また、製品のTime to Market(製品化までの時間)が短くなり、シングルボードコンピュータからインテグレーテッドコンピューティングシステムへの移行が起きている」と語り、IoT時代におけるアプリケーションの細分化と市場スピードが同業界に影響を及ぼしているとした。
同氏はさらに、エンジニアリング技術の向上、生産コストの低さから、組み込みPCメーカーのメインストリームが欧州からアジアにシフトしていると指摘し「アジアのブランドは組み込みの世界で影響力を発揮するだろう」と予想。また、IoT時代で競争に勝つためには、従来のデザイン・イン型のビジネスモデルではなく、"IoTのコンセプト"を販売するビジネスモデルへの転換が必要とし「IoTでは、フォーカスをモジュールから通信、ソフトウェア、(業界ごとの)アプリケーションにまで広げなければならない」と語った。
IoTを実現する4つのテクノロジー
Ho氏は続いて、IoTで今後の展開に注目すべきテクノロジーを紹介。同氏が挙げたテクノロジーは以下の4つ。
- センサー
- ワイヤレス通信
- IoT-PaSS
- ビッグデータ
まず、センサーについては「現在、センサーには1000種類以上があるが、例えば温湿度センサーなど、異なる種類のセンサーが統合されるのが近年のトレンドだ。小型化しワイヤレスデバイス、MCUなどとも統合されている。また、消費電力は低下し、精度も向上している」とコメントし、IoTにおけるデータの入り口であるセンサーで顕著な技術向上が見られるとした。
ワイヤレス通信に関しては、注目技術としてLPWAN(Low Power Wide Area Network)をピックアップ。「通信距離の広さもさることながら、消費電力の低さが際立つ」とし、活用が想定されるスマートシティなどでは環境面での恩恵が大きいと分析した。同技術はコスト面でもメリットが大きくHo氏によれば「(運用コストは)1デバイスに付き1ユーロ/年だとされている」(Ho氏)という。
同社も注力しているIoT-PaaSの重要性については「デバイスで収集したデータをクラウドに転送するためには(データが通る)橋が必要となる。IoT-PaaSはデバイスとクラウドを橋渡しする役目を担う」と説明。アドバンテックは自社の「WISE-PaaS」に加えてマイクロソフトのAzure、ARMのmbed Cloud Platform Servicesとも連携しているため、製品的なアドバンテージがあるとアピールした。
Ho氏が4つ目の注目テクノロジーとして挙げたビッグデータでは「IoTでは収集したデータをアルゴリズムで解析することで知見を得る。このアルゴリズムをAPIとして提供することで、知見獲得の低コスト化と迅速化が可能となる」とし、アドバンテックが展開する「WISE-PaaS Marketplace」はその提供方法の1つだと説明した。
アドバンテックの今後については、センサー、クラウド、通信などIoTの構成要素について各業界の企業とパートナーシップを結んでいくほか、SIerと共同で個別のアプリケーションを開発していくという従来の方針を継続していくとした。また、最後に2020年の目標を発表し「IoTにおけるグローバルリーダとなり、売上を現在の12億ドルから24億ドルまで倍増させる」(Ho氏)と語った。