アドバンテックは10月27日~29日、台湾・林口にてプライベートイベント「アドバンテック 2016 Embedded-IoT Partner Summit」を開催した。同イベント初日の基調講演では同社の創業者であるKC Liu CEOをはじめとするエグゼクティブが登壇し、IoT時代に向けたビジョンおよび戦略を発表した。
創業者・Liu氏が語る「ハードとソフトの統合」
巨大なビジネスチャンスが眠る市場として注目を集めるIoT。Liu氏は初めに、IoT市場について「次の25年で3つのパラダイム・シフトが訪れるだろう」とコメント。同氏がいうパラダイム・シフトとは以下のフェーズ1から3までの移行を指す。
- フェーズ1: デバイスのインテリジェンス化
- フェーズ2: ハードウェアとソフトウェアの統合
- フェーズ3: ニーズに応じたIoTクラウドサービス
Liu氏は「アドバンテックはフェーズ1をすでに完了し、フェーズ2に移りつつある」とし、ドメインごとのSaaS化を実現するソフトウェア群であるSRP(Solution Ready Platforms)や、IoTデバイス向けプラットフォーム「WISE-PaaS」のソフトウェア・パッケージをバンドルしたEIS(Edge Intelligence Servers)の提供などを具体例として挙げた。
また、同氏は今後について「ソフトウェア中心のソリューション製品が(アドバンテックの)成長を牽引することになる。ハードウェアの成長は緩やかになるだろう」と語り、SRPやEISなどのソリューション製品を中心としたプラットフォームビジネスへの移行を進めるとした。
プラットフォームビジネスは「エコシステムの構築」という言葉を使って説明されることが多いが、Liu氏は同社が目指すビジネスモデルを「Sharing Platform Business Model(シェアリングプラットフォームビジネスモデル)」と表現。これは、パートナー企業との協調を強く意識しているためで、センサ、半導体、通信、クラウドのパートナー企業とプラットフォームレベルで連携するほか、パートナー企業だけでなくサードパーティプロバイダが独自のIoTアプリケーションを展開できるマーケットプレイス「WISE-PaaS Marketplace」などを通じ、IoTに関わるプレイヤーが対等な立場で相互連携するモデルだ。
「アドバンテックを製品中心の企業から、シェアリングプラットフォーム企業に変えていきたい。こうした(ビジネスモデルの)変化はグローバルレベルでメガトレンドだ。こうした変化をスムーズに達成できればアドバンテックを次のレベルに持っていける」(Liu氏)
IoTを実現するプラットフォーム製品を紹介
Liu氏に続いて、エンベデッドIoT部門のVice PresidentであるMiller Chang氏が登壇。Liu氏がアドバンテックのビジョンを示したのに対し、Chang氏はそれを具体化した製品・サービスについて説明した。
Chang氏はまず、IoTセンサプラットフォームのオープン規格である「M2.COM」を紹介。同規格はM.2コネクタを使用することで、産業機器で必要とされるさまざまな無線技術に1つのプラットフォームで対応可能とするものだ。このほか、5つのアンテナと3つの無線モジュールを統合した次世代ゲートウェイ「UTX-3117」、100以上のI/Oに対応可能なボックスPC「ARK-2250」などのプラットフォーム製品を発表した。
また、「WISE-PaaS Marketplace」では、デバイスの数に応じてマイクロソフトのAzureを3段階のスケールで利用可能とするほか、ARM mbed Cloud Platform Serviceにも対応。アドバンテックとARMが手を組む狙いについては別稿でレポートする。
Chang氏はさらに今後の注力製品の1つであるEISにも触れ、同製品群では「WISE-PaaS」のソフトウェアがあらかじめセットされているため「IoTソリューションを構築するための環境を簡単に実現できる」とアピールした。