東京医科歯科大(TMDU)は10月28日、アレルギー炎症を引き起こす新たな鍵分子を発見したと発表した。

同成果は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科免疫アレルギー学分野 山西吉典講師、同大学 副学長・理事 烏山一教授らの研究グループによるもので、10月27日付けの米国科学誌「Blood」オンライン版に掲載された。

最近の研究から、アレルギー反応において、白血球の0.5%を占める稀少な免疫細胞「好塩基球」が、肥満細胞やT細胞などのほかの免疫細胞とは異なる役割を果たしていることがわかってきている。

同研究グループはこれまでに、マウスの慢性アレルギー皮膚炎症モデル(IgE依存的慢性アレルギー炎症: IgE-CAI)を用いて、好塩基球がIgE依存的慢性アレルギー炎症を引き起こす主役であることを突き止めていたが、好塩基球がどのようにしてこのアレルギー炎症を誘発しているのかはよくわかっていなかった。

今回、同研究グループは、好塩基球のみが選択的に産生・放出するタンパク分解酵素のひとつ「mMCP-11」に着目。mMCP-11欠損マウスを作製し、IgE依存的慢性アレルギー炎症を誘発させた結果、野生型マウスに比べて、皮膚の腫脹・血管透過性亢進・炎症性細胞(好塩基球、好酸球、好中球、マクロファージ)浸潤といった炎症兆候が半減していることがわかった。

また、mMCP-11を人工的に作製して、マウスの耳に皮内注射すると、皮膚の腫脹と炎症性細胞浸潤が起こった。加えて、試験管内で好塩基球、好酸球、マクロファージをmMCP-11で刺激すると、細胞の走化性が高まり、mMCP-11の存在する方へと細胞が引き寄せられる現象が観察された。

さらに、この細胞の走化現象は、血清中に存在する何らかのタンパク質がタンパク分解酵素であるmMCP-11によって切断され、その切断後の分解産物が誘発因子となって引き起こされることが判明。この分解産物は、最終的に好塩基球、好酸球、マクロファージの細胞表面に存在するGタンパク質共役受容体に作用して、これら細胞の走化性を高めることも明らかになった。

同研究グループは今回の成果について、将来、好塩基球の機能制御によってアレルギー疾患が克服できることを期待させるものであると説明している。

mMCP-11によるアレルギー病変への細胞浸潤誘発メカニズム