日本マイクロソフトは10月25日、報道関係者向けに教育機関向け施策に関する発表会を開催した。教育のデジタル トランスフォーメーション(変革)を加速させるための新たな教員研修プログラムとICT教育研修モデルルームの設立や、「Mincraft: Education Edition」の国内提供開始、SINET5とMicrosoft Azureの直接接続を発表した。
日本マイクロソフトが2016年7月に行った新年度経営方針記者会見では、2017年度における6つの注力分野として、「お客様のデジタル トランスフォーメーションの推進」をその1つとして掲げている。日本マイクロソフト 執行役員 常務 パブリックセクター担当 兼 Windowsクラスルーム協議会 理事長 織田浩義氏は、「教育分野もその1つ。これまで以上に教育分野へ情熱を持って取り組んでいく」と強く宣言した。
日本政府は、2016年6月に閣議決定した「日本再興戦略2016」の中で、人材力を強化するための目標を次のように掲げている。初等中等教育を対象に「授業中にITを活用して指導できる教員を2020年までに100%」「都道府県および市町村におけるIT環境整備計画の策定率を2020年までに100%」「無線LANの普通教室へ整備を2020年度までに100%」を目指すなど、情報活用能力の育成や教育環境の整備促進を掲げた。日本マイクロソフトでは、政府方針に即するため、いくつかの施策で対応する。
教育環境の整備については、産官学連携コンソーシアム設立とICT教育の教員研修の提供に対応するため、プログラミング教育を含む「新しい教員研修プログラム」と、教員研修環境として「ICT教育研修モデルルーム」の提供を開始することを明らかにした。その背景には2016年8月に産官学が連携した取り組みによる「教育委員会応援プラットフォーム(仮称)」の構築と、2016年10月に発足した「全国ICT教育首長協議会」がある。「日本マイクロソフトおよびWindowsクラスルーム協議会が要請をいち早く受けた(織田氏)」という。2020年までに全教員の約5%にあたる5万人へICT利活用教員研修と、プログラミング教育の研修を無償で提供するプログラムを開始する。
前者はWindows 10とOfficeを活用したハンズオン研修という形で、2015年12月1日から提供を始めており、既に7000人の研修を終えている。後者はICT教育ツールを自身の授業で利活用したい教員向けに、Microsoftが数十年にわたって教育変革研究を行ってきた「Education Transformation Framework」をベースに、ICTを活用した「カリキュラムと評価 8つのトレンド」で世界の実践例と共に紹介。日本マイクロソフト パブリックセクター統括本部 文教本部 原田英典氏は、「ワークショップの形で教育の現場を題材にICTの利活用を見つめ返す時間として利用してほしい」と説明した。
後者は佐賀大学や奈良教育大学など各大学を設置場所として検討し、デジタル教材や電子黒板などICT教育を実施するにあたって適切な場所を設けて、教員へ学びの場を提供するプログラムである。例えば日本マイクロソフトの国内支社に教育関係者を招くこともできるが、全国ICT教育首長協議会と連携する形で実施するため、Windowsクラスルーム協議会としては、協議会側の要望に合わせて設置場所を柔軟に対応していくという。
学習指導要領改定による発達段階に即したプログラミング教育の必須化に対応するため、「Minecraft: Education Edition」を2016年11月1日(米国時間)から提供し、情報教育推進校(IEスクール)の支援を通じたプログラミング教育の普及促進に努める。1教員あたり月額120円(ボリュームライセンス参考価格)を支払うことで、生徒は無償で利用できる。
さらに2016年10月25日から、ライセンスを付与するための無償ボリュームライセンス契約締結が可能な教育機関(教育委員会や学校など)を対象に「はじめよう教育用Minecraft活用キャンペーン」を実施し、教員2500名(約3万8000名の生徒に相当)に対して1年間のMinecraft: Education Editionの無償ライセンスを提供。後者は文部科学省が小中高等学校におけるプログラミング教育などの調査研究を実施するプログラムだが、同省が選定した14箇所のうち、北海道浦河高校やつくば市立春日学園などの5箇所を日本マイクロソフトがサポートする。
そしてAI(人工知能)/IoT(モノのインターネット)/ビッグデータなどを牽引するトップレベル情報人材の育成については基盤構築を強化するため、国立情報学研究所の学術ネットワークであるSINET5とMicrosoft Azureを2017年1月より直接接続する。日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター統括本部 文教本部長 小野田哲也氏は、ネットワークは10Gbpsで接続し、大学・研究機関によって使用する帯域は異なるが、通常接続との相違点として、IPSECを用いたIP-VPNで接続するため、パブリックトラフィックの影響を受けずに校内ネットワークに近い感覚で、Microsoft Azureが利用できると説明。「2020年までに400大学・研究機関との接続を目指す」(織田氏)という。
阿久津良和(Cactus)