4月に起きた熊本地震によって阿蘇山カルデラを横切る地表に新たな断層ができ、ここが地下マグマの新しい通り道になって再噴火の可能性があることを、京都大学の林愛明(りん あいめい)教授らの研究グループが明らかにした。研究グループは、地震から長期間にわたる現地調査やデータ解析をした結果、阿蘇山地下のマグマだまりによって熊本地震の東方への拡大が食い止められた、とするとともに今後、過去に確認されていない場所で再噴火のリスクがある、とみている。研究成果はこのほど米科学誌サイエンスに掲載された。
京都大学大学院理学研究科の林教授らは、熊本地震の直後から現地に入り阿蘇カルデラを含む広い範囲で調査を続けた。この過程で阿蘇カルデラを横切る全長約40キロの「地表地震断層」を発見。地表地震断層は地震によって形成された地溝帯で、この地表地震断層の中でも、阿蘇カルデラ西縁部に位置する約9キロの部分は幅数10メートル、上下約2メートルの部分は地表が割れた「地表割れ目帯」になっていた。
同教授らはさらに、熊本地震前後の画像データを含め同地震や阿蘇カルデラ内の活断層などに関するさまざまなデータを総合的に解析した。その結果、新たに見つかった地表地震断層や地表割れ目帯は、熊本地震の本震を起こしたとされる「布田川断層」と連続していないことが分かった。
研究グループは、阿蘇山北西部の地下約6キロにマグマだまりがあるため、熊本地震の揺れによって生じた力が伝わる方向が変化。熊本地震による断層拡大が阿蘇山地下にあるマグマだまりでせき止められる形になる一方、新たな断層や割れ目帯ができたとみている。
研究グループは、地表の割れ目帯はマグマの新しい通り道できた可能性を示しているとして「(過去に確認されていない場所での)再噴火の危険性を再評価する必要がある」と提言している。
研究グループは、論文をまとめた後の今月8日に起きた阿蘇山・中岳第一火口の爆発的噴火については「熊本地震と直接関連しているかどうかは不明」としながらも「提言は妥当性があると考えている」とコメントしている。
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