サッポロビールは10月20日、ブドウ果汁に含まれる「アントシアニン」が酵母に作用することで、赤ワインの特徴的なアロマ成分の一種である「ジアセチル」の量を高めていることを明らかにしたと発表した。同成果は、10月19~20日に行われた「平成28年度日本醸造学会大会」で発表された。
ジアセチルは、赤ワインの特長的なアロマのひとつで、ほかの酒類や白ワインと比べ、赤ワインでは含有量が高く、少し甘い後香を残したり、味の厚みにもつながる香りを醸すといわれている。同成分が赤ワインで高い理由はこれまで、赤ワイン特有の乳酸菌発酵によるものとされてきた。
同社は今回、赤ワインの原料となる黒ブドウ果汁を、合成吸着剤(XAD)や逆相クロマトグラフィで9種類の画分に分け、それぞれを白ブドウ果汁に加えてアルコール発酵を行った。この結果、ジアセチルの生成が促進される画分があることを発見。さらに、その画分の添加量に応じてジアセチルの生成量も変化すること、その主要な成分はアントシアニンの一種であるマルビジン-3-グルコシドであることを明らかにした。
また、黒ブドウ果汁と、アントシアニン類を人為的に取り除いた果汁の2種類の果汁を用いてアルコール発酵の比較試験を行うことで、ジアセチルの変化に関わる酵母の遺伝子BDH1の発現が抑えられていることを見出した。これにより、ブドウ果汁中に含まれているアントシアニン類が酵母に働き、赤ワイン特有のアロマであるジアセチルの生成量を増やした可能性があるといえる。
同社は今回の結果について、同じ赤ワインでもアントシアニンが多く含まれているブドウ果汁を用いると、ジアセチルが高く、味のボディ感が増し、反対に、同成分が少ないブドウ果汁を用いると、ジアセチルが低いワインが造れる可能性が示唆されたとしており、さらに、赤ワインと白ワインの中間であるロゼワインなどの醸造への応用技術としても期待されるとコメントしている。