キリンは10月20日、ワイン酵母を用いた柑橘香と甘味を付与するビール醸造技術を開発したと発表した。同成果は、10月19日~20日に行われた「平成28年 日本醸造学会大会」にて発表された。
ビール醸造において、酵母はホップの香気成分を変換するとともに、甘味・苦味のバランスを取るのに重要な役割を担っていることが知られている。
同社は今回、酵母、清酒酵母、ワイン酵母、ウイスキー酵母など合計約1100株からなる独自の酵母バンクを活用し、ホップ由来のゲラニオールから柑橘香物質であるβ-シトロネロールへの高変換能を持つ酵母を選抜。焼酎酵母、ワイン酵母、および上面発酵酵母株114株について試験管10mlスケールでの発酵試験を実施した。その後、β-シトロネロール生成能の高かった株については、500ml、20L、200Lへとスケールアップして再評価を行った。
さらに、仕込み工程における糖化条件を最適化することにより、単糖対マルトースの比率を制御し、発酵後にマルトースを残留させることで甘味付与にも取り組んだ。
この結果、β-シトロネロール生成能の高い株として、対象であるKBY011株の約3倍の高変換能を持つワイン酵母WIY40株を選抜。さらに、このWIY40株を用いて、仕込み・発酵の条件を最適化し、マルトースを残留させることで甘味付与を実現した。
同社は今回の成果について、柑橘香が豊かで自然な甘みが強調され、苦味が抑えられたビールの開発につながったとしている。