シトリックス・ジャパンは10月13日、都内のホテルで年次イベント「Citrix Xchange Tokyo」を開催した。本稿では、同社のビジョンや戦略、日本市場の概況と顧客シナリオにスポットを当てた講演の模様をお届けしたい。
「Citrixのビジョンと戦略」と題した講演では、Citrix systems コアインフラストラクチャ部門 バイスプレジデントのSteve Wilson氏が登壇、デジタルトランスフォーメーションに向けた戦略を語った。
IoTを駆使した新たなワークスペースの実現とワークスタイル変革
冒頭で、同社の基本的なビジョンとして「人、組織、物をつなげて行く技術を進化させ、お客さまの大いなる可能性を実現する貢献がしたい」と語ったWilson氏。戦略については、「アプリケーションの配信方法、データのあり方、どんなネットワーク上でも環境を用意すること。これらをCitrix Cloudの中で展開して行く」と端的にまとめた。
デジタル変革については、クラウド、モバイル、ビッグデータ分析、IoTという4つのトレンドがあらゆる分野の企業に大きな影響を与えていると指摘。特にモバイル分野ではBYOD(Bring Your Own Device)に着手する企業が増える中、さまざまなデバイスも登場している。多彩なデバイスを業務で受け入れるには、セキュリティを担保して展開するための技術が必要だ。これをできるだけ簡易に実現するのがCitrixだという。
そのためのツールとして提供しているのが、Citrix Cloudを通じて提供している各種機能だ。XenApp、XenDesktop、XenServer、XenMobileといった製品が「Xenファミリ」と総称されるようになったこと、これまでシンプルなビジネスアプリの配信用と思われていたソリューションにリッチな3Dアプリ配信機能が搭載されたことで高度なグラフィックス処理の必要な作業にもXenファミリが対応可能になったことなどが語られた。
「すべてに共通しているテーマは、セキュリティ。ITとしても最も大きな課題となってくる。Citrixの戦略とビジョンの一部として、みなさんがセキュリティを確保するための製品、サービスを提供して行く」(Wilson氏)
アプリとデータのセキュアな配信を可能にする統合的な技術サービスであるCitix Cloudについては、クラウドファーストの考え方で革新を進め、ユーザーがクラウドへ乗り換えることを期待すると語りながらも、現実には企業ごとに速度の差があることも認め、データの一部をファイアウォール内に置いたままクラウドサービスを利用するなど、ハイブリッドな利用を推奨するとした。
Citrix Cloudではさまざまな機能を統合的に提供する。その上で、ユーザーエクスペリエンスも提供するという。「これまでに学んだことがある。一番重要なコンセプトは利便性だ。エンドユーザーから見た使い勝手のよさが満たされなければ、最高のユーザー体験が提供できなければ、ユーザーはそのサービスを使うことはない」とWilson氏は指摘した。
管理者側には、短時間での導入やコスト削減を実現するほか、簡易な管理や自動化によるスキルギャップの解決といった価値を提供する。また、新しく追加された機能も既存環境からスムーズに利用可能であるとし、1日のうち利用する時間に応じたスケーリングを実現するSmart Scaling、最新環境への適応をサポートするAutomated UpdatesやAutomated Upgradesを紹介した。
新たな環境の実現については、Windows 10をCitrix Cloudから提供するパートナーシップについて日本マイクロソフト クラウド&ソリューションビジネス統括本部 Azure&クラウドインフラストラクチャ技術本部 本部長である吉川顕太郎氏が語った。
「XenDesktop Windows 10 on Azureによってオンプレミスのデスクトップに展開するだけでなく、VDIで利用できるようになり、より多くのお客さまの要望に応えられると考えている。提供時期は定まっていないが、年末に間に合うように進めている。さらにXenApp ExpessによってAzureからWindows Appの提供も行い、多くの要望に応えて行く」と吉川氏は語った。