IDC Japanは10月18日、国内企業の人材戦略と人事給与ソフトウェア市場動向の調査結果を発表した。
同調査は、国内企業の人事/人材戦略の策定や実行、関連するシステム管理に携わる600名を対象として、生産性の向上や労働力の確保を目的に各社が進める戦略策定の推進者、取り組みと課題、関連するIT利用の実態を調査したもの。
2015年から対応が進むマイナンバー制度やストレスチェック、女性活躍推進法など、企業が推進すべき人事戦略と取り組みには、CHRO(Chief Human Resource Officer)やCHO(Chief Human Officer)といった、人事最高責任者よる経営視点が従来以上に求められているという。しかし、その設置率は10.5%にとどまり、41.3%の企業では人事部長がその役割を担っていた。大企業ほど、人事部が人事戦略と取り組みを推進する傾向が強く、採用管理などで必ずしもIT対応をしていない業務実態も明らかとなった。
会社の組織と人材強化に向けての取り組み段階:業績「増加」とその他企業 資料:IDC Japan |
今後は、事業のグローバル展開や人材の流動化を背景に、社員のモチベーションアップやスキルアップを重視し、多様な取り組みを効率化するIT導入が検討されているという。17種類の人事給与関連分野のITについて調査したところ、今後1年間の導入/刷新予定の上位は、マイナンバー管理/人材教育/ストレスチェックなど、主に法制度対応と業務基盤を支える給与計算や正社員の要員管理となった。しかし3年以内では、全種類で導入予定が上昇し、上位は人材教育/人事ワークフロー/採用Web制作、非正規社員の要員管理など、多様化に向けての対策が進む様子を示している。なお、調査時点における取り組み実施率は(IT対応の有無にかかわらず)、マイナンバーが75%、ストレスチェックは56%という結果になった。
また、人事関連の取り組みにおけるコスト配分では、2015年度実績も2016年度計画でも「採用」が全体の約3割と最も多く、いずれの従業員規模においても同様の結果を示している。採用分野のIT(採用管理/採用Web制作/ソーシャルリクルーティング/ダイレクトリクルーティング)は、採用管理を中心に導入検討が進んでいるという。同調査レポートでは、人材の可視化で重視する指標や、今後採用したい人材(職種とタイプ)、また業績「増加」を続ける企業の自社に対するイメージなど、幅広い視点で調査した結果も合わせて報告している。
同社ソフトウェア&セキュリティ マーケットアナリストのもたい洋子氏は、「人材ビッグデータなど最新のIT動向に注目が集まっている。しかし企業の評価指標や取り組み段階は実にさまざまで、現状では全企業に適用できるナレッジは限定的。今後、競争力強化を図るためには、業績を前年度比1%以上で伸ばし続ける企業に見られたように、戦略投資として人材関連の取り組みを進めることが必須。そのためユーザー企業は、経営やビジネス視点を取り入れ、形骸化しない人事戦略と組織作りを検討すべきであり、ITサプライヤーは、部分最適のシステム提案から、クラウドソリューションで次世代の取り組みを支援すべきである」と述べている。