強い温室効果がある代替フロンの代表格であるハイドロフルオロカーボン(HFC)の生産量を、先進国は2036年までに85%削減することにルワンダで開かれたモントリオール議定書第28回締約国会議で15日、議定書締約国が合意した。発展途上国も先進国に遅れて削減する。
規制対象になるのは、冷蔵庫やエアコンなどの冷媒に使われているHFC。国連環境計画(UNEP)や環境省関係者によると、米国や日本などの先進国はHFCの生産量を2019年から徐々に減らして36年までに11~13年の平均に比べて85%削減する。途上国は国によって削減スケジュールが異なる。例えば中国は24年に削減を始め、45年に20~22年の平均比で80%削減する。この結果、先進国、途上国合わせてすべての締約国は40年代後半にそれぞれ基準年比80~85%削減することを目指すという。
代替フロンは、オゾン層を破壊するフロンの代替として世界的に普及した化学物質の総称。冷蔵庫やエアコンの冷媒、断熱材、スプレー噴射剤などに使用されている。オゾン層は破壊しないが、温室効果が二酸化炭素(CO2)の数百倍以上、中には数万倍も強いものがあり、温暖化防止のためには代替フロン全体の規制が必要とされてきた。
第28回締約国会議はルワンダの首都キガリで10日から開かれ、15日に削減案に合意した。代替フロンが段階的に生産規制されることが決まったため、モントリオール議定書締約国の中でも率先して削減することになった先進国は、今後代替フロンから冷媒をアンモニアやCO2に切り替えることや機器からの漏えい防止を徹底することなどが求められる。
モントリオール議定書は、オゾン層を保護することを目的に1987年に採択され、フロンなどの化学物質の製造や使用を段階的に全廃することを定めている。現在197の国・地域が批准している。ナイロビに本部がある国連環境計画(UNEP)が事務局。
代替フロンを削減する交渉は7年前に締約国会議で始まり、削減スケジュールや削減率、先進国と途上国の間にどの程度削減目標の差を付けるか、などについて議論が続いていた。
日本政府は「フロン回収・破壊法」を改正し、「フロン排出抑制法」と命名した改正法を昨年4月に施行。業務用のエアコンや冷凍冷蔵機器の管理者(第1種特定製品管理者)に機器の適切な管理を求め、漏えい量の報告なども義務付けた。また、新しい冷媒への切り替え策を推進してきた。現在新しい家庭用冷蔵庫は代替フロンを使わないノンフロン式が一般的になっている一方で業務用冷蔵庫や冷凍庫は依然HFCを使っているものが多い。
環境省関係者によると、今回の合意を受け、HFCの製造に許可制を導入することや自然冷媒の普及徹底などの代替フロン削減対策を一層強化する方針という。
温暖化防止の新しい国際的枠組みである「パリ協定」は11月4日に発効する。代替フロンの削減により世界の気温上昇を0.5度程度抑えることが可能とされている。今回具体的な代替フロン削減目標で合意したことにより、温暖化対策でオゾン層保護と温暖化防止の両方を目指す国際協調連携が整ったことになる。
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