神戸大学は10月13日、未知の菌従属栄養植物「クロシマヤツシロラン(Gastrodia kuroshimensis)」を鹿児島県で発見したと発表した。
同成果は、神戸大学大学院理学研究科 末次健司特命講師によるもので、10月12日付けの植物分類学誌「Phytotaxa」に掲載された。
植物のなかには光合成をやめ、菌類に寄生して一方的に栄養を搾取する菌従属栄養植物が存在しており、これまで日本からは約50種が報告されている。菌従属栄養植物は光合成を行わないため、花期と果実期にしか地上に姿を現さないうえに、花期も短く、サイズも小さいものが多いため、見つけることが非常に困難である。
今回、末次特命講師は、鹿児島県三島村黒島での調査のなかで、未知の菌従属栄養植物を発見。同植物は、ラン科オニノヤガラ属のトカラヤツシロランに近縁であるが、つぼみのまま開花しないことや花の内部構造が異なることから、トカラヤツシロランと区別できることがわかった。そこで同植物を新種として記載し、発見場所の地名を冠して、「クロシマヤツシロラン」と命名した。
同植物は、光合成を捨て去っているのみならず、つぼみのまま自家受粉するため花を咲かせないという特徴がある。菌従属栄養植物は光合成を行わないため、光の届かない暗い林床を生育地としているが、このような環境にはハナバチやチョウといった通常花を訪れる昆虫がほとんどやってこない。
そのため末次特命講師は、同植物について、暗い林床でも確実に繁殖できるように、受粉に昆虫のサポートを必要としない自家受粉を採用し、さらには花を咲かせることもやめた可能性があると考察している。