京都大学(京大)と富士通は10月6日、日本医療研究開発機構(AMED)が進める「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業」に採択されたことを発表した。実施期間は5年間を予定している。
同事業に採択された研究開発課題は「ゲノム医療を促進する臨床ゲノム情報知識基盤の構築」で、遺伝子情報を病気の診断や治療などに活用するゲノム医療を実現・普及させることを目的に、がんなどの疾患領域ごとの臨床情報やゲノム情報のデータベースと各種公開データベースを統合し、信頼度・精度の高い臨床解釈を付与して公開する「臨床ゲノム統合データベース」の構築を目指す。
具体的には、これまで専門家が行ってきた人手によるデータ集約作業の過程を定式化・アルゴリズム化し、専門家によるデータ集約作業の支援を行うキュレーションシステムを開発する。同キュレーションシステムでは、独自の機械学習・AI技術を開発することで、高精度かつ高速な臨床解釈付与の支援を目指していく。
特に富士通では、現時点で疾患との関連性が明らかではない遺伝子多型に対する臨床解釈を推定する技術の開発に向け、富士通研究所がこれまで開発してきたLOD(Linked Open Data)活用基盤を利用し、医療分野における学術文献や公共DBを集約した知識ベースを構築。同知識ベースをもとに、同社のAI技術「Human Centric AI Zinrai」を構成する独自の機械学習技術を適用し、臨床解釈の推定と、その根拠となるエビデンスおよび治療薬候補などを出力するシステムを構築する。
富士通は、これらの技術を発展させることで、医療だけでなくさまざまな分野における企業や大学の研究開発を支えるAI技術として、同社のビジネスへも展開していく予定であるとしている。