京都工芸繊維大学(京都工繊大)は10月4日、書き換え型3Dマルチカラーホログラフィックディスプレイデバイスの開発に成功したと発表した。
同成果は、京都工芸繊維大学材料化学系堤直人教授、木梨憲司助教らの研究グループによるもので、9月16日付の科学誌「NPG Asia Materials」に掲載された。
ホログラフィは、物体や被写体からの情報を光の強度と位相の情報としてそのままの形で媒体に干渉縞として記録し、再生させる技法。再生光(読出し光)により再生される情報はもとの物体からの情報そのままであるため、違和感なく3D立体像として再生される。
同技法は、アート作品、クレジットカードや紙幣の偽造防止技術として利用されているが、これらはすべて暗室で撮影され、その後写真と同様に暗室で化学反応による現像や後処理などを経て、半永久的なホログラム像として得られるものであり、書き換えは不可能。大面積で明るい環境下で書き換えできるホログラム材料はこれまでほとんどなかった。
今回、同研究グループは、カルバゾールとアゾ基とを1分子内に有するモノリシック化合物を用いて、物体や被写体からの3次元情報を干渉縞として記録し同時に再生し、さらに消去と同時に上書きする3D書き換え型マルチカラーホログラムデバイスの開発に成功した。
同ホログラムデバイスでは、青色(488nm)レーザー光の干渉パターンの明部でモノリシック化合物の光物理化学的な構造変化が瞬時に起こり、その部分に物体や被写体の3次元情報が干渉縞として記録されると同時に、赤色(632.8nm)および緑色(532nm)の読出し光により明るく再生させることができる。また、特段の消去プロセスなしで、さらに別の物体や被写体からの3次元情報を上書きすることが可能。現在は、200×200mm2サイズだが、大面積化は容易であるという。
同研究グループは今後、ホログラムのフルカラー化への拡張を目指してくとしている。また、ミリ秒オーダーの高速応答性の電界印加型フォトリフラクティブポリマーの開発にも成功しており、それらにメモリ機能を付与することにより、さらに高速の3Dホログラフィックディスプレイデバイスへと展開させていきたい考えだ。