IDC Japanは10月3日、国内ITサービス市場予測を発表した。同市場は2016年以降も低率ながら成長を継続し、2020年には5兆8062億円の見通し。2015年~2020年の年間平均成長率(Compound Annual Growth Rate:CAGR)は、1.5%と予測している。
国内ITサービス市場は、2009年から2011年まで世界的な金融危機と景気後退、さらには東日本大震災の影響を受けて3年連続でマイナス成長が続いた後、2012年から4年連続でプラス成長を実現した。
特に2014年と2015年の2年間は、前年比成長率で3%を上回る成長となった。この間の成長を支えたのは、企業の業績回復を背景とした既存システム更新/拡張需要に加え、金融機関のシステム統合/更新、官公庁/地方自治体での支出拡大、小売業の店舗システム刷新といった大規模なプロジェクトだった。
2016年は大型案件が一段落し、成長率の鈍化が想定されているほか、成長のドライバーはデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する支出に移っていくとIDCでは予測している。例えば、IoT(Internet of Things)、デジタルマーケティング、ビッグデータを活用した製品/サービスイノベーション、ITを活用した新たな事業開発などの案件が対象だという。
2018年以降は、こうした案件実現のためのコンサルティング、システム開発、アウトソーシング支出が市場をけん引していくと想定している。ただし、DXが市場に浸透する中で、国内企業のIT支出の形態は、これまでのようなシステム開発、アウトソーシングといったITサービス関連支出から、クラウド(特にSaaS)、BPO(Business Process Outsourcing)などの代替サービスへと移っていくことも予測される。これは、国内ITサービス市場拡大の阻害要因としても働くという。
国内ITサービス市場はDXを軸として大きな変革期を迎えており、単なるサービス/製品の変化にとどまらず、企業のIT投資行動、サービス提供価値、ITサプライヤーの競合など、市場に関わるあらゆるものを変革するような「パラダイムシフト」だという。
IDC Japan ITサービス/コミュニケーションズ/IPDS/ユーザーサーベイ グループディレクターの寄藤幸治氏は「ITサプライヤーはDXを自らの成長機会とすべく、今一度提供サービス領域やケイパビリティの見直しを行うとともに、DXを志向する顧客の要望に応えられるようなサービスデリバリー体制を整えていく必要がある。例えば、スタートアップ企業や主要顧客とのアライアンス、既存のITの範囲にとらわれないサービス提供などがそれにあたる」と分析している。