兵庫県立大学と山口大学は10月4日、アユの個体数・生物量を河川水から調べる環境DNAによる河川性魚類の調査法を確立したと発表した。
同成果は、兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科 土居秀幸准教授、山口大学大学院創成科学研究科 乾隆帝特命助教、赤松良久准教授らの研究グループによるもので、10月4日付けの英国科学誌「Freshwater Biology」電子版に掲載された。
河川におけるアユをはじめとした魚類の定量は、多大な時間や労力がかかり高コストであることが課題となっている。
同研究グループは今回、河川などの水環境中に含まれる生物のフンや表皮などから溶け出た「環境DNA」というDNA断片に着目。DNA断片を増幅・定量できるリアルタイムPCR法を用いて、河川水1L中に含まれるアユのDNA量を測定し、潜水による目視調査で得られたアユの個体数・現存量と河川水中のアユDNA量の関係性を調べた。調査は、山口県・佐波川の7地点を対象に、2015年5月、7月、10月の計3回行われた。
この結果、アユが潜水調査で確認されたところではすべて環境DNAが検出されただけでなく、アユによる捕食跡(ハミアト)しか見つかっていないところでも環境DNAが検出されたという。さらに目視調査による個体数・生物量と環境DNAの関係性を調べた結果、高い正の相関関係があることが示され、環境DNAを調べることでアユの個体数・生物量を推定できることがわかった。
同研究グループは、今回の結果について、環境DNAを用いた魚類の定量調査が従来の調査手法よりはるかに簡便に行えることを示唆しており、生物調査だけでなく河川における水産資源管理や生態系管理への応用が期待できると説明している。