公益法人日本デザイン振興会は29日、2016年度グッドデザイン賞の受賞結果および、「グッドデザイン大賞」候補を発表した。ここでは、マイナビニュース編集部が「グッドデザイン大賞」候補作に関して、過去の受賞傾向を見ながら、独自に予想した内容をお届けする。

大賞の有力馬は一時"品切れ"になったあの冊子

候補作の中から、編集部が有力馬としてピックアップするのが、東京都により全都民に配布された「東京防災」。既存の公的団体によるパンフレット的なビジュアルとは一線を画した仕上がりとなっている。

「東京防災」(電通+NOSIGNER+電通テック+たき工房+ブレーンシップ+トランス・メディア+岡村優太)

配布開始時にも話題を呼んだが、2016年4月に発生した熊本地震を契機に再度注目が集まった。手元に置いておきたいルックス、読んでためになる内容と、ソフト・ハードともに「デザイン」に配慮され、制作チームの企画意図である「デザインの力で『防災』を『FUN!』にすること」が冊子というかたちに昇華されている。

「東京」という冠こそあれ、震災に遭った時の備えに関する記載は、どの地域においても実用的なものとなっている

また、過去のグッドデザイン賞では、2011年には、本田技研工業の「カーナビゲーションシステムによる情報提供サービス」が大賞を受賞している。これは、東日本大震災の直後、道路が寸断され平時のように走行できなくなっていた中、地震発生時から当日の24時までに収集した走行実績データをオープンフォーマットでWEB上に公開することで「いま、使える道路」を明らかにしたものだ。

ちなみに、グッドデザイン賞の「応募」に関して、2011年度から東日本大震災の復興支援策として、応募費用の全額免除をおこなう特例措置枠が設けられ、今年度は29件がそこから受賞している。こうした背景からも、今年発生した災害にリンクした本件が受賞する可能性も強いのではないかと予想する。

対抗馬は身近なモノでIoTを可能にする乾電池

モノがインターネットにつながる時代をあらわす「IoT」というバズワード。IoTデバイスを使うことはあっても、それを「つくる」ことは多くの人にとって難しい。そんな中にあって、誰にとっても身近な乾電池を用いて、おもちゃなど任意のモノを操作可能にする「MaBeee(マビー)」が大賞候補に選ばれている。

「MaBeee(マビー)」(ノバルス)

あらかじめメーカー側でパッケージ化された製品でなく、ユーザーが選んだ「乾電池で動くモノ」をスマートフォンで操作できるようにする発想が新しい。また、クラウドファンディング「Makuake」での資金調達により製品化を実現するなど、それを欲しいと思ったユーザーから開発資金を集める昨今の流れも汲んでおり、現代を象徴する製品と言えるかと思う。一方で、同製品に対するニーズはテック愛好家が中心となっていて、東京防災のような普遍性は持たないことから「対抗馬」とした。

その他の候補については、グッドデザイン賞の記者会見記事にて参照してほしい。

知られたモノか、知らせたいモノか

6件の受賞候補作の中から、独断で2件をピックアップした。直近の受賞履歴を振り返ると、2013年のGoogleマップ(※大賞として選出されたが政府より受理されなかったため、別名にて贈賞)や2010年のダイソン「エアマルチプライアー」など、すでに多くの人々が使ったり、認知したりしている「知られたモノ」が選ばれる傾向もみられる。

その一方で、2014年に大賞となったデンソー+デンソーウェーブの産業用ロボット「医療医薬用ロボット VS050 SII」や2005年のテルモ「インスリン用注射針」など、特定の産業・分野にインパクトを与え、人々の生活を陰ながら支えている「知らせたいモノ」の受賞事例もある。

今回がどちらに該当するかは不明ではあるものの、社会的なインパクト、災害支援の枠組みを設けている日本デザイン振興会の姿勢などから、「東京防災」を推した。ともあれ、これから一般・審査員双方の投票はこれから。"2016年を代表するデザイン"の決定の時を待ちたい。