IDC Japanは9月29日、エンタープライズITインフラストラクチャにおける新たな課題に関する調査結果を発表した。これによると、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携利用に際して顕在化した課題は、ID管理/データ連携/アプリケーション連携/運用・管理/費用配賦(各部門への費用の割り振り)の5つの領域で発生しているという。
同調査は、ITバイヤーに対して行ったインタビュー調査を基に分析した。顕在化した課題は、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携利用を妨げ、両者を組み合わせた最適なエンタープライズITインフラストラクチャの実現を遅らせているとしている。
その中で、ID管理およびデータ連携とアプリケーション連携における課題が特に深刻度が高いと同社は見ており、その理由として、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携利用するうえで阻害要因となることを挙げている。
パブリッククラウドサービスは、サービス提供者が個々に独自のID管理機能を持っており、個別に運用することを基本としており、ITバイヤーがオンプレミスITインフラストラクチャで利用しているシングルサインオン機能では、即座にIDを統合管理できないという。
結果として、ITバイヤーはパブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャでIDの二重管理を行うか、シングルサインオン実現のために新たなID連携機能の追加導入を強いられるとしている。
パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャとの間におけるデータ転送の遅延によって、アプリケーション側の処理とデータベースアクセスのタイミングに差が生じ、アプリケーションの異常終了や従来実現していた処理性能を発揮できない場合があるという。
また、パブリッククラウドサービスはサービス提供者が個々に独自の操作画面を提供しており、オンプレミスITインフラストラクチャのアプリケーションの操作画面とユーザーインタフェースを共通化する際には課題が顕在化する場合もあると同社は指摘する。
同社エンタープライズインフラストラクチャ リサーチマネージャーの下河邊雅行氏は「企業のパブリッククラウドサービス利用は拡大している。しかし、同サービスの利用に当たって新たな課題が顕在化している。ハードウェアベンダーは、ITバイヤーが抱える課題の解決策を早急に提供すべきである。ハードウェアベンダーがITバイヤーの課題に対処するということは、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携処理に関する各種APIや、自動構成機能を自社ソリューションに備えることを意味する。つまり、ハードウェアベンダー製品において、Software-Defined Infrastructure(SDI)への対応を強化し、ITバイヤーのエンタープライズITインフラストラクチャの最適化実現に寄与することが、ハードウェアベンダーにおける注力ポイントになる」と分析している。