ブリヂストンは9月28日、燃費特性を意識した標準的なゴム配合(基準配合)に対して燃費特性を大きく損なうことなく、亀裂進展の転移エネルギーを約4倍強上昇させる材料の開発に成功したと発表した。
タイヤの低燃費性を向上するために、ゴム・エラストマー材料の転がり抵抗の低減、すなわち粘性散逸の低いゴム材料の開発と適用が各社で行われている。一方、タイヤの各構成部材の薄ゲージ化による重量の低減は、タイヤ使用時の低燃費性に貢献するだけでなく、使用する原材料の削減による省資源性、生産時の消費エネルギーの低減、廃棄時の廃棄物量の削減にもつながる。しかし、薄ゲージ化を実現するためには十分な耐久性能の確保が必要であり、既存技術の枠を超えた強靭な材料の開発が必要となる。
ゴム・エラストマーの強靭化の視点としては、高破断強力、高破断歪、耐摩耗性、耐カット性、耐引裂き性など多岐にわたる強度特性が挙げられるが、それらに共通する課題は、潜在欠陥(初期亀裂)の生成とその成長(亀裂進展)の抑制と考えられている。
そこで同社は、亀裂進展、特に所定のエネルギー解放率を与え亀裂を自走させた際に観察される特異な亀裂進展速度の転移挙動に着目。亀裂先端の形状変化に着目した実験的マクロスケール解析、大規模放射光設備などを活用した亀裂先端の実験的ミクロスケール解析、理論物理・計算機シミュレーション、新概念材料の具現化の4つの視点から、同現象の本質理解と転移エネルギーの制御手法の確立に取り組んでいる。
同社は現時点で、燃費特性を意識した基準配合に対して燃費特性を大きく損なうことなく、進展の転移エネルギーを約4倍強上昇させる材料を開発。同材料をゴムクローラに用いて実証検証を行った結果、基準配合に対して摩耗速度が60%低減することを確認している。
今後は、さらなる強靭性の向上と、低燃費性との両立を追求してくとしている。