ヤフーは9月28日、10月1日に移転を予定している東京ガーデンテラス紀尾井町の本社を報道者に向けて公開した。あわせて、本社移転を機に、多様な働き方の支援や従業員の心と身体の健康増進を推進するため、「新幹線通勤」の導入と、「チーフ・コンディショニング・オフィサーの新設を発表した。
同社は今年6月、本社移転に合わせて、全従業員5700名の働き方改革を実施すると発表しており、本誌でも、独自で取材を行った。その際、まだ新本社を見学することができなかったのだが、今回、ようやく実現した。
見学会では、副社長執行役員 最高執行責任者の川邊健太郎氏、上級執行役員 コーポレート統括本部長の本間浩輔氏が説明を行った。
初めに、川邊氏が本社移転を機に同社が取り組む「働き方革命」の意義について説明した。同氏は「この10年、インターネットの利用がPCからスマートフォンやIoTにシフトしつつあるなど、状況が変わってきているにもかかわらず、働き方は変わっていない。そこで、われわれはイノベーションを起こすために働き方のリズムを変えることにした」と語った。
同社が目指す「イノベーション」とは、「既にあるモノを組み合わせて新しいモノを生み出す」ことだ。「発明はゼロから起こすことであるため難しいが、イノベーションは普通の人間でも起こせる」と川邊氏。
新本社では、いろいろなアイデアを持った社員による情報の交差点を作って、このイノベーションを生み出すべく、さまざまな仕掛けを行う。その具体例が、机をジグザグに並べたフリーアドレス、コワーキングスペースの導入だ。
「机をジグザグに並べてオフィス内を歩きづらくすることで、人の"摩擦"を起こしたい。コワーキングでは、社外の人とコラボレーションをすることができる。今や、技術により、作業面だけを見ると、出社しなくても可能の状態となっている。そうしたなか、会社を人と情報が集まることでイノベーションが生み出せる場にすることで、会社に通う意味を変えたい」と、川邊氏は語った。
続いて、本間氏から、新本社で導入される新たな制度について説明が行われた。「利益を追求するだけでなく、仕事を通じて幸せを感じることができる社員を増やすため、"安全・安心・豊かさ"に注力したい」と、同氏は、本社移転に合わせて新制度を導入した意図を述べた。
社員の「豊かさ」や「健康」を支援する新施策が「新幹線通勤の導入」「チーフ・コンディショニング・オフィサーの新設」「健康的な食事の提供」となる。
具体的には、通勤時間が2時間以上の社員を対象に、交通費を上限15万円まで支給する。本間氏は、新幹線通勤について、「物価や家賃など、生活にかかるコストを減らすことで、豊かさを得られる可能性がある。また、最近、介護や育児が理由で退職する人が増えてきたので、新幹線通勤を認めることで、こうした人たちの退職を回避することが可能になるのではないかと考えている」と語った。
チーフ・コンディショニング・オフィサーには、9月1日より、代表取締役社長 CEOの宮坂学氏が就任している。今後、従業員に付与しているスマートフォンや、社員食堂「BASE」などを活用した健康増進の取組みを進めていく。
「チーフ・ヘルス・オフィサーを設けている企業もあるが、われわれは社員のコンディショニングの向上に注目することで、生産性を上げていきたいと思っている。具体的には、AIやIoTを活用することで、コンディショニングの向上を実現していく」と本間氏。