鍼灸師・若林理砂さんが、あなたの近くにいそうなキャラたちの健康相談に答えるこの連載。第10回は、頭痛や肩こりに悩むIT企業の営業さんです。
女性、30代、IT企業営業職
大の甘党で、引き出しにはチョコと飴を常備。話題のスイーツ情報やコンビニの新商品は常にチェックする。
本日の患者さんの悩み「肩こりと頭痛がひどい」
こんにちは。今日はどうされました?
「先生、肩こりがひどくて……頭痛も時々出るんです。」
忙しく働いてる中で頭痛に悩まされているのは、お辛いでしょうね。
「鎮痛剤もあんまり効かないし、たくさん飲むと体に悪いだろうと思って、ギリギリまで我慢してます……」
ところで、そのカバンにつけていらっしゃるパンケーキのチャーム、Q-pot.ですか?
コンビニスイーツからパンケーキまで総チェック
「あ、そうです。私、甘いものが大好きで! 見た目も可愛いですよね」
では、毎日おやつ召し上がりますか? なるほど、オフィスの引き出しの中にはチョコとキャンディーを常備してるんですか。そのカバンの中にも? ……そうですか。
そういえばこの間、コンビニで美味しそうな新作スイーツ見ましたよ、私。なんでしたっけ、バラと……。
「あ、バラとライチのケーキですか? あれおいしかったですよー、オススメです!」
じゃあ、あのパンケーキのお店行きました? 朝食が有名とかいう。
「はい、すごい並びましたけどおいしかったですー。リコッタチーズが入ってて、ふわふわで!」
頭痛の原因、なんとなくわかってきましたよ。
おやつと食事の”主従”を見直す
ところで、甘いものをこれだけ召し上がっているのに、 結構ほっそりしてらっしゃいますね。BMIってどのくらいですか? 19.5ですか。パンケーキとかを召し上がった時、夜ご飯とかってどうなさってます?
「抜きますねー。太りたくないしー」
やはり、食事を抜いたりして対応なさっているのですね。おそらく 、その頭痛と肩こり、栄養の偏りから起こっていますね。
「え、私ちゃんとご飯も食べてますよ? 」
だけど、甘いものを毎日召し上がって、その上でBMIが標準値の下限あたりであるということは、本来の食事の内容を無意識で省いていることを示しているんです。単純に言ってしまえば、カロリーをたくさん取ったら太るし、そうでなければ痩せるのでね。
甘いものって、糖質と油脂くらいしか含まれていませんよね。おやつを優先して、本来の食事の方を少なくしていってしまうと、その他の栄養素が取れないのですよ。そうすると、自律神経失調症状が出るんです。
甘い物と頭痛のつながり
鎮痛剤が効きにくい痛みって、自律神経失調が関係していることが多いのですよ。だから、甘いものを食べる習慣を一度まるっきりやめてみていただけますか? 一カ月くらい。
「ええーっ! 無理です!そんなの!これが唯一の楽しみなのに」
……みなさん、そうおっしゃるんですよね。食習慣を変えようと提案すると、大抵そういうお返事をされます。でも、それは、『無理』なんじゃなくて、『イヤ』なんでしょう? 毎日甘いものを好きなように食べるのをやめるのが。
だいたい、コンビニで調達できるような菓子が 唯一の楽しみなんて、すごく寂しいことだと思いません? 大人なんだから、他にもいろんな楽しみがあるでしょう?
「……言われてみれば確かに……。だけど、脳を使ったら甘いもので栄養補給が必要なんじゃないですか? 」
スイーツ、もっといえばブドウ糖が脳の栄養、っていう言い回しも広まってますけど、普通のお食事で炭水化物を摂っていれば必要ないんですよ。それに脳の栄養という考えなら、甘いものである必然性はないんです。だから、甘いものを一旦やめて、食事の量と内容を見直してください。
「断スイーツ」でなく「とびきりのごちそう」を
「……甘いもの、絶対に食べてはいけないってことなんですか? 」
いいえ、それは違います。例えば、並んでまで食べたいパンケーキとか、そういった「どうしても食べたいご馳走」として、特別なものとしての甘いものを月に1~2度召し上がるのは問題ないんですよ。毎日のように、本来の食事内容に問題が出るような食べ方をしてはいけないということです。
だから、甘いものを手に取りそうになったら、それは本当に自分が今食べたくて、特別なご馳走となり得るものかどうかを一度立ち止まって考えてみて。そうすると、かなりの頻度で食べるのを止めることができますから。
「できるでしょうか。ちょっと不安です」
こうして意識していると、十把一絡げに「断スイーツ」するよりずっと続けやすいんですよ。たとえばものすごく美味しい差し入れがあった時なんかにも、何も気にせず心から楽しんで食べられますし、もっともっと、甘いものを深く感じられるようになりますよ。
では、養生してね。お大事に!