富士通は9月21日、日本バスケットボール協会(JBA)、およびジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)とICTパートナー契約を締結し、都内のホテルで調印式を行った。契約は2016年9月から4年間で、その後の延長もありえるという。
調印を終えたばかりの契約書を手にする3者代表。左から日本バスケットボール協会 会長 三屋裕子氏、富士通 代表取締役会長 山本正巳氏、ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)チェアマン 大河正明氏(写真提供:富士通) |
富士通はバスケットボールのプレイヤーや指導者などを対象とした「データ・マネジメントサービス」や、ファンへのタイムリーな情報提供を実現する「デジタルマーケティングプラットフォーム」、プレイヤーのスキルやチーム力の向上、視聴者に新たな視聴スタイルを提供する「スマートアリーナソリューション」などのICTを提供する。
今回のパートナー契約に至った経緯について、日本バスケットボール協会 エグゼクティブアドバイザー 川淵三郎氏は、次のように説明した。
「約1年前の私がJBA会長時代、富士通の山本会長と親しく話をする機会を得た。そのとき、バスケットボールの発展や地方創生について、協力してもらえるかどうかの話をしたのが今回のきっかけだ。そして、今年5月の富士通フォーラムでスポーツICTを実際に見て、一緒にやっていけば、バスケットボール協会が発展していけると確信した」(川淵氏)
富士通では今回のパートナー契約において、「デジタルマーケティングプラットフォームの構築」「スポーツIoT」「スマートアリーナ」の3つの実現に向け協力する。
「デジタルマーケティングプラットフォームの構築」では、国内のプロ選手、学生、学校の生徒など、国内に65万人にいるバスケットボール選手、関係者を一元管理し、強化選手や日本代表選手の選出のために必要な基礎データを簡単に検索できるようにする。また、地域活性化を目的として、試合やイベント参加などの顧客情報を一元管理し、ファンへのタイムリーな情報提供やきめ細かいプロモーションなどの効果的なマーケティング活動を支援する。こちらはすでに開発中で、来年の春以降、順次提供していくという。
これについて、富士通 執行役員常務 東京オリンピック・パラリンピック推進本部長 スポーツ・文化イベントビジネス推進本部長の廣野充俊氏は、「他のスポーツでは、これらを一元管理できておらず、有能な選手の計画的な育成や引退選手の協力ができていなかった」と説明。
また、一元的なプラットフォームを構築するメリットについて川淵氏は、「ジュニアからシニアまで同じ戦術で戦っていく必要があるが、適格な資料ビデオが現在存在していない。これを日本全体に広めて、みんなが楽しんでいけたらいい。また、どういうスローの角度が肘をいためるのか、こういう練習はよくないといったことが広まれば、子供たちにもバスケットボールの楽しみを広げることができる」と述べた。
「スポーツIoT」では、同社が自動車の自動運転向けに開発している3Dレーザーセンシング技術やプレイヤーモーショントラッキング技術を活かし、選手の行動や動きを捉え、シュートする際の肘の角度やボールの回転数など、動きを数値化することで戦術やケガ防止に利用していくという。
3Dレーザーセンシング技術は、1秒間に約230万点のレーザーを対象物に向けて発光し、レーザーが戻ってくるまでの時間から距離を計測。細かく角度を変えながらレーザー発光することで、動いている立体物をとらえる。そして、人の動きを正確に測定したら、そのデータから関節の位置や曲がり具合を導いていく。同社ではこの技術を用いて、体操競技における採点支援技術の共同研究を行うことをすでに発表している。
なお、データ解析用のデータについては、来年から静止画を集めた動画の提供を行い、2020年に向けて、リアルタイムで動画が提供できるように技術開発していくという。
そして「スマートアリーナ」では、試合会場においてWi-Fiで選手の情報を取得したり、さまざまな角度から撮影した映像(自由視点映像)を提供。また、試合会場である体育館は地域の中心で災害時の避難所にもなることから、地域との共生を目指していく。
調印式において、富士通 代表取締役会長 山本正巳氏は「JBAが目指している世界に通用する選手の輩出、エンターテインメントの追求、夢のアリーナの実現に対し、富士通はスポーツICTで貢献していく。また、B.LEAGUEのチームが拠点とする地方自治体に対して、スポーツ文化市場の創出、高齢者や障害者向けのユニバーサルデザインの浸透、観光や防災のほか、地域活性化に協力していきたい。また、スポーツにおけるAIの活用も検討していく」と挨拶した。