ヴイエムウェア 代表取締役会長 三木泰雄氏

「be_tomorrow」をテーマに掲げたVMwareの年次イベント「VMworld 2016」には、日本からも約250名が参加した。「VMware Cloud Foundation」「Cross-Cloud Architecture」といった新たな戦略が発表された。

今回は、あらゆるクラウドをシームレスに“つなぐ”重要性と、そのソリューションが具体的に示された格好だ。ヴイエムウェアの代表取締役会長である三木泰雄氏は、「日本でもクロス(マルチ)クラウドに対する需要は伸びている」と語る。

「EUC(End User Computing)分野も含め、近年は以前にも増してヴイエムウェアに対する期待値は高まっている」と語る三木氏。今回示された新たな方向性を、どのように日本で訴求していくのか。話を聞いた。

--VMworld 2016のテーマである「be_tomorrow」を、日本の顧客にどのように訴求していくのか--

三木氏: クラウド戦略に関して言えば、数年前に発表したコンセプトが具現化し、包括的な意味を含め、完成形に近づいている段階だ。ネットワーク仮想化製品である「VMware NSX」や仮想ストレージ「VMware Virtual Storage(VSAN)」など、SDDC(Software-Defined Data Center)を実現するために必要なコンポーネントも充実させている。こうした流れが、今回発表された「VMware Cloud Foundation」につながっていると考えてほしい。

もう1つ、VMworld 2016では、われわれのクラウド戦略を明確に打ち出せたと考えている。例えば、これまでわれわれが提唱していた「ハイブリッドクラウド戦略」は、(VMwareが提供する)「vCloud Air」と「vCloud Air Network」でハイブリッドクラウドを構築するというメッセージが強かった。そのため「AWS(Amazon Web Services」や「Microsoft Azure」とは対立するようなイメージを持たれていた部分もあった。

しかし、多くの企業ユーザーは、すでにAWSやAzureを利用しており、「さまざまなクラウドを連携させたい」というニーズが多い。われわれはこうした声に応え、新たなマルチクラウド戦略として「Cross-Cloud Architecture」を発表した。

日本市場でも開発環境やクラウドネイティブなサービスをAWSで利用している企業は多い。しかし、すべての環境をAWS上で運用している企業はない。Cross-Cloud Architectureは、「開発環境はAWSで、本番環境はプライベート(クラウド)で運用したい」と考えている企業に受け入れられると信じている。実際、そういった要望は、日本でも数多く伺っている。

VMwareの掲げるビジョン

--EUC分野では、「VMware Workspace ONE」の機能強化が発表された。日本でのEUC戦略を教えてほしい--

三木氏: われわれは、2014年にエンタープライズモビリティ管理製品であるAirWatchを買収し、モバイル分野でも積極的に(製品/サービスを)展開していく姿勢を鮮明にした。従来のVDI(Virtual Desktop Infrastructure)に加え、セキュリティのセグメントを仮想マシン単位に分割した「マイクロセグメンテーション」など、認証やアプリケーションの配信にも注力してきた。「VMware Workspace ONE」はこれらが統合されたものだ。

経営的観点からも、セキュリティは重要課題であり、数多くの経営者が関心を持っている。実際、VDIの目的はセキュリティ強化が圧倒的に多い。さらに、近年では、モバイルワークやリモートワークに対する需要も高まっている。VMwareの強みは、顧客の進捗状況に応じ、必要なものを提供できる点にある。すでに社内ではWorkspace ONEを活用している。今後は(ユーザーとしての)経験を基に顧客に訴求していきたい。

--日本市場におけるEUCのニーズは高まっているのか--

三木氏: 具体的な数字は公開できないが、日本におけるEUCの売上は、米国に次いで2位であり、その成長率は、グローバルの平均成長率よりも高い。特に現在は、地方自治体がインターネット接続と分離する目的でVDIを導入している。地方自治体は市場的にも大きく、積極的に獲得していきたいと考えている。

すでにわれわれは多くのSIrとパートナーシップを結んでいる。こうしたネットワークも生かしながら、サービスやサポートの面でも一層の充実を図っていきたい。