高脂肪食を食べ続けると肝臓内で特定のタンパク質が増加して脂肪肝を悪化させるメカニズムを、大阪大学の研究グループが明らかにした。このタンパク質は脂肪などの分解を抑える働きがあり、同グループはこのタンパク質を標的とした治療薬の開発が期待できるとしている。研究成果は9月下旬以降に米科学誌電子版に掲載される。

図 脂肪肝発生のメカニズム(提供・大阪大学/大阪大学の研究グループ)

脂肪肝は高脂肪食などの過剰摂取により中性脂肪が肝臓にたまった状態。研究グループによると、先進国では人口の約30%が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)。NAFLDの10~20%は進行性の脂肪肝炎(NASH)で肝硬変や肝がんにつながるという。また、生体には細胞内で不要な脂肪などを分解する「オートファジー」と呼ばれる仕組みがあり、脂肪肝では「ルビコン」というタンパク質がオートファジーを抑制することまでは分かっていたが詳しいメカニズムは未解明だった。

大阪大学大学院医学系研究科の竹原徹郎(たけはら てつお)教授(消化器内科学)と、2009年にルビコンを発見した吉森保教授(よしもり たもつ)教授(遺伝学)らはルビコンに着目。マウスに4カ月間、脂肪を約30%含む高脂肪食を与え続けるとマウスの肝細胞はルビコンが増加し、オートファジーが抑制されていた。また、ルビコンが働かないように遺伝子操作したマウスの肝臓は、オートファジーが機能し、脂肪蓄積が減っていた。さらに大阪大学の臨床部門の協力を得た研究でNASHの患者の肝臓内でもルビコンが増加していることを確認した、という。

今回の研究成果について吉森教授は「オートファジー不全を伴う病気は脂肪肝以外にも報告されておりルビコンが原因のものもあるかもしれない」と、また竹原教授は「肝疾患の中でも最も頻度が高い脂肪肝の治療につなげたい」などとコメントしている。

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