産業技術総合研究所(産総研)は9月13日、水に応答して構造が変化し内容物を放出する新規の有機ナノカプセルを開発したと発表した。
同成果は、産総研 機能化学研究部門 界面材料グループ 小木曽真樹主任研究員、丁武孝研究員らの研究グループによるもので、日本油化学会誌「Journal of Oleo Science」オンライン版に掲載される予定。
同研究グループが今回開発した有機ナノカプセルは、直径100~150nmの均一なサイズからなるもので、アミノ酸誘導体であるカプセル化剤と亜鉛化合物を、室温でアルコールなどの有機溶媒中で混合操作するだけで製造することができる。
溶媒1L当たり100g以上のナノカプセルを数時間以内に得ることができるうえ、ろ過により溶媒と分離し、乾燥することが可能。乾燥後もカプセル構造は安定であり、製造時に目的物を混合しておくと、カプセル形成時にそれらを内部に封入することができる。有機溶媒に溶解あるいは分散が可能なものであれば、親水性、疎水性を問わず封入可能だという。
同ナノカプセルを水に分散すると、ナノカプセルの壁を形成する成分のひとつである亜鉛イオンが水和することで、カプセルの壁の構造が変化し、内容物が放出される。アルコール以外の有機溶媒では安定であり、トルエンやアセトンに1日間分散しても変化は起こらない。
同研究グループによると、芳香性物質を封入したカプセルを化粧品や制汗剤などに加えることで、汗や雨水などでぬれたときに目的の香りを放出させる機能や、自己修復物質を封入したカプセルを塗料に添加することで、塗膜に傷がつき水が内部に侵入した際に、目的物質が放出され塗膜が修復されるといった機能が期待できるとしている。
今後は、薬剤などをより効率的にカプセル化する技術を開発すると共に、企業への試料提供などを通して放出特性の評価や用途開拓を進める予定だという。