産業技術総合研究所(産総研)は9月12日、微細構造の毛細管力を利用した超高精細・厚膜印刷技術を開発したと発表した。

同成果は、産総研 集積マイクロシステム研究センター マルチスケール機能化表面研究チーム 穂苅遼平研究員、栗原一真主任研究員らの研究グループによるもの。2016年9月14~16日にパシフィコ横浜で開催される「MEMSセンシング&ネットワークシステム展2016」にて開発品が展示される。

スクリーン印刷では、印刷原版を高精細化すると開口部のインク詰まりなどが生じるため、量産時のパターンの線幅は約50μmが限界であった。また、微細な印刷パターンを電気配線として用いる場合、電気抵抗を低く抑えるために高アスペクト比が求められるが、一般的な印刷技術では1を超えるアスペクト比の配線を印刷することは難しい。

そこで今回、同研究グループは、微細成形技術や微細凹凸構造による表面濡れ性制御技術をもとに、微小間隙に生じる毛細管力を利用した高精細印刷技術を開発した。

具体的には、まずナノインプリント成形により、フィルム表面に大きな毛細管力が生じるように適切に設計したナノメートルからマイクロメートルの凹凸構造を形成し、その後凹凸構造を形成したフィルムにスクリーン印刷を行った。こうすることで、凹凸構造により大きな毛細管力が生じ、構造の微細な間隙に機能性インクを充填でき、数μmの線でも印刷可能となる。同技術では原版パターンの1/30の線幅のパターンでも印刷できるため、従来の技術のように原版パターンの開口部を微細化する必要がなく、開口部のインク詰まりの問題は生じない。

ナノインプリントとスクリーン印刷による微細な厚膜印刷の工程

また、従来の印刷技術による導電フィルムでは、波長550nmの光の透過率が43%であったが、同技術を用いると、線幅3μmという超微細な配線を印刷できるため、導電フィルムの透過率は90%となった。

さらに従来の印刷技術では、微細化すると配線の高さも低くなり、シート抵抗が増加してしまっていたが、今回の技術では、凹凸構造の微細間隙内にインクを閉じ込めるため、配線を微細化しても高さを保つことができ、高いアスペクト比の配線を印刷でき、シート抵抗の増大を抑制することができる。

今回開発した技術は、自動車や家電などの曲面パネルのフィルムインサート成形にも応用できる。同研究グループは今後、高精細・厚膜印刷フィルムのサンプル提供や共同研究などにより、技術の高度化と橋渡し連携活動に注力していくとしている。

従来技術(左)と今回開発した技術(右)で印刷したパターン。インク滲み・拡がりを防いで高いアスペクト比を保ち、フィルムの透明性も向上している