アドビ システムズ主催のクリエイター向けイベント「Adobe MAX Japan 2016」が9月2日、開催された。この催しは、米国で行われている本家イベント「Adobe MAX」を、日本のユーザー向けに開催したものだ。
例年、米国のイベントの後に日本国内で振り返りイベントを行っていたが、今年は本家に先駆けて日本でイベントが催された。
この変化によって、国内イベントでは異例の「SNEAK PREVIEW(スニークプレビュー)」のコーナーが設けられた。これは本国の「Adobe MAX」の名物で、これからAdobe製品に搭載される"かもしれない"、目下開発中の機能をお披露目する企画となっている。
米アドビ システムズ テクニカルアーティストの伊藤大地氏がスピーカーを務め、現在開発中の機能が3点披露された。
2Dから3Dモデルを生成する
最初に紹介されたのは「3D Character Generator Based on 2D Design」。アニメーションなどのキャラクターでは正面、横顔、後ろ姿を描く設定画(キャラクターシート)を制作するが、それからモデリングの知識なしで、3Dモデルを生成可能にするツールだ。
この機能は2015年のAdobe MAXで発表されたものと似ているが、その当時の機能とは基準となる点の打ち方が異なっていた。生成されるモデルも、テクスチャなしのものから、画像をそのまま貼り付けたような仕上がりに変わっている。
このツールは高精細なディテールを作り込むのではなく、ローポリモデルを2次元の画像から作り出し、キャラクターデザイナーの確認を行うという意図で設計されており、このデータをエクスポートして別のソフトで作り込むという利用形態も可能。キャラクターデザイナーが自分で操作できるため、3D化した際の状況をスムーズにイメージできる。
デモで披露さられたラフな3D化の作業は2~3分程度、より細かく描写するためにあらかじめ点描するのにかかった時間は40分程度だったそうだ。
画風は問わず3D化可能で、キャラクターシートの描き込みをそのまま反映することも可能。写真も利用可能だ。「固まりなら何でも」立体化できるということで、現場では寿司を3Dにしていた。写真に若干のパースがかかっていても、問題なく3D化できる。
新しい「写真ブラシ」と"3D風"エフェクト
続いて、写真から画像制作ツールのブラシを作る「Brushables」を公開。写真をブラシ化するアプリはすでにあるが、この機能を使って重ねて描画することで、「コンテンツに応じる」機能を塗りに反映したような形で、元々の写真を再現することができる。そのほか、ブラシのストロークに応じて描画の方向が変化したりもする。
最後に紹介されたのは「LazyFluids」。費用や時間がかかり、技術者も少ない3Dの物理シミュレーションを2Dで行い、それをビデオや静止画にはめこむことで代替しようという機能だ。会場では、同機能で2Dエフェクトから生成した"3D風"のマグマの流れなどを組み込んだ映像表現が紹介された。
あらためて注記すると、これはあくまでも「将来的に搭載される可能性のある新機能」であり、すべてがそのまま製品化されるとは限らない。しかしながら、現在Photoshop CCに搭載されている「マッチフォント」機能は2015年の「SNEAK PREVIEW」にあたるコーナー(「Sneak Peeks」)で発表されたものに非常に近く、これら"未来の機能"の中から、公式にアップデート内容に含まれるものも当然出てくるだろう。
昨年米国で発表された「SNEAK PREVIEW」の機能は11点あったため、そのボリュームと比べるとやや小ぶりとなった日本での発表。この後控えている米国イベントで、クリエイティブシーンの進化を感じさせるさらなる新機能が明かされることを期待したい。