日立製作所は9月5日、2050年を見据えた環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を発表した。
近年、世界的な環境課題解決に向け、2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」や、国際連合で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、環境負荷の削減に社会が長期的に取り組んでいく意志が示されているという。
同社は、こうした動きを踏まえ、長期的な視点から、気候変動、資源の枯渇、生態系の破壊などの環境課題に対する取り組みが必要であると考え、2050年をターゲットとする環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を新たに策定。日立の環境経営でめざす姿を定めた「環境ビジョン」の下、「低炭素社会」「高度循環社会」「自然共生社会」の3軸で環境問題に取り組む。内容は以下の通り。
「低炭素社会」の実現
バリューチェーンを通して、CO2排出量を2030年度までに50%削減、2050年度までに80%削減(2010年度比)を目標とする。
現在、日立のバリューチェーン全体におけるCO2排出量は、日立が提供する製品・ソリューションの使用段階での排出が9割以上を占めているという。そのため、使用段階でのCO2排出量の削減に向けて、生産段階での削減も継続するとともに、以下の4つの方策で取り組みを進める。
- 事業構造を低炭素化へ移行
- 環境負荷の削減に寄与する革新的デバイス・材料の開発
- 超高効率化によりさらなる省エネルギーを実現するプロダクツや、低炭素エネルギーの開発・普及
- 広域、複合的にシステム間で連携協調することにより、さらなる省エネルギーを実現する社会システムソリューションの普及
「高度循環社会」の実現
水・資源循環型社会を構築するとともに、日立グループ内における水・資源利用効率を2050年度までに50%改善(2010年度比)を目標とする。
具体的には、事業を通じて、水・資源循環型社会の構築に最大限貢献するため、質の高い造水、浄水、配水、下水に至る一連の処理を進化させ、循環利用を拡大するソリューションを提供する。また、海水淡水化システムをグローバルに展開することで、水資源を創出していくとした。さらに、日立が使用する水・資源の利用効率を2050年度までに2010年度比で50%改善することを目指し、以下の方策で取り組む。
- 長寿命・省資源のモノづくりや事業のサービス化・シェアド化により、資源の効率的な利用および廃棄物量の削減を推進
- 製品回収・リサイクルの徹底により資源の循環的利用を推進
- 地域の水リスクに応じ、生産工程における水使用量を削減、排水浄化・再利用を強化
「自然共生社会」の実現
自然資本へのインパクトの最小化を目指す。
日立のバリューチェーンの各ステージにおいて、生態系に与える影響を評価し、負荷を最小限にするための施策を推進していく。具体的には、大気や水の浄化システムや、自然モニタリングシステムなど、製品・サービスの提供を通じて、生態系を保全するとともに、配慮した調達活動を推進する。また、工場敷地の希少生物種への配慮や排水・排気の量・質・温度などの管理を通じて、工場やオフィスにおける環境負荷も最小化する。