腸管からの尿酸排出を担っているタンパク質「ABCG2」の機能が低下すると尿酸値が上昇することを、防衛医科大学校分子生体制御学講座の松尾洋孝(まつお ひろたか)講師、崎山真幸(さきやま まさゆき)医官らの研究グループが人間を対象にした研究で初めて明らかにした。腸管が障害を受けるとABCG2機能が低下して尿酸値上昇をもたらす詳しい過程も今回解明され、尿酸値測定が小腸障害のマーカーとして使える可能性を示した。研究成果は8月30日付の英科学誌に掲載された。

図 ABCG2による尿酸排出の病態生理学的モデル。急性腸炎などの消化器疾患の患者は腸管の炎症で腸からの尿酸排出が妨げられるのでABCG2の遺伝子変異による腎臓のABCG2機能低下が尿酸値に大きく影響する。(防衛医科大学校の研究グループ提供)

体内の尿酸は約3分の2が腎臓から、残りは腸から排出される。尿酸は産生と排出のバランスが保たれているので、健常者では一定の範囲の値をとる。しかしこのバランスが崩れ尿酸排出機能が低下すると高尿酸血症になる。また、急性腸炎などの消化器疾患では高尿酸血症を伴うことがあるが、脱水が原因と考えられてきた。松尾講師らはこれまでの研究で、ABCG2が尿酸排出を担い、その遺伝子に変異があるとABCG2機能が低下して高尿酸血症を発症する危険性が高まることなどを明らかにしている。

研究グループは今回、腸管に炎症が生じるとABCG2機能が低下し、高尿酸血症を引き起こすのではないかと考え、済生会横浜市東部病院(角田知之〈つのだ ともゆき〉医員ら)の協力を得て急性腸炎患者67人の尿酸値とABCG2遺伝子の関係を調べた。さらに、つばさクリニック(東京都、大山恵子〈おおやま けいこ〉院長)の協力と血液透析患者の同意により透析患者106人のABCG2遺伝子を解析した。

これらの研究の結果、腸管の炎症により小腸などが障害を受けるとABCG2機能が低下して尿酸の排出に支障をきたして尿酸値を上昇させることが分かった。研究グループによると、血液透析患者での解析からABCG2 が腸管からの尿酸排出機能を担っており、実際に小腸から尿酸が排出されることを人間のレベルで初めて証明した成果という。

松尾講師らは、尿酸値測定が小腸障害のマーカー候補となるほか、今後の研究により広く消化器疾患の診療に役立つ可能性がある、としている。

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