理化学研究所(理研)と産業総合研究所(産総研)は8月30日、連携・協力に関する基本協定を締結したと発表した。
理研と産総研は2001年以降、112件の共同研究契約を締結・実施してきており、現在も36件の共同研究が進んでいるが、今回、新たに基本協定を締結した理由について、理研 松本紘理事長は、「総合研究機関としての両機関が協力することによって、世界初/世界一の技術を実現していく協力体制を構築していきたいということで意見が一致した。この協定で新たな研究分野の開拓、研究者の交流の活性化、若手人材の育成、研究能力の強化などを行っていきたい」と説明している。
具体的には、革新的量子技術による省エネルギーデバイスやシステムの開発、触媒化学や情報・計算科学を融合したキャタリストインフォマティクスによる空気資源化触媒の開発、生命医科学ビッグデータの知識ハブの構築、実験のロボット化とネットワーク化による実験生命科学の加速といった現在取り組んでいる課題に対して、共同で研究開発を進めていく。また、文部科学省・経済産業省・総務省の三省連携のもと、人工知能に関する研究も行っていくという。
これに加え、クロスアポイントメント制度を活用した研究人材の交流や、両機関の若手・中堅研究者による挑戦的な共同研究、人材の交流・育成を推進していく。この具体的な取り組みとして、今年秋にも、両機関の精鋭若手・中堅研究者による「21世紀イノベーションリーダーワークショップ」が開催される予定となっている。
同ワークショップでは、たとえば温室効果ガス排出削減や、超高齢化社会、人工知能が人間の脳を超える「2045年問題」などといった、2050年に世界が直面する社会課題に対する科学技術ソリューションのコンセプトが議論される。ここで共有されたコンセプトをもとに、具体的な研究テーマへ落とし込むことで、年間数件程度の共同研究へ発展させていきたい考えだ。
記者会見で、産総研 中鉢良治理事長は、「異なる持ち味や得意分野を持つ2法人が連携することで、新たな現象の発見から、産業への応用、社会実装までを一気通貫で進めることができ、世界をリードするイノベーションを実現することが可能になる」としたうえで、「今回のテーマは、2050年の世界の課題解決を目指し、人類社会に対して果たすべき役割を明確にすること。またグローバルに活躍する人材育成や異分野融合を進めることで、21世紀に求められる研究開発の新たなスタイルを作り出すことにもつながる」と意気込みを語った。