ソニーの新規事業創出プログラムから生まれたFashion Entertainmentsプロジェクトは29日、電子ペーパー搭載の柄が変わる時計「FES Watch」の第2弾プロダクトとして「FES Watch U(フェスウォッチ ユー)」を発表。同製品のクラウドファンディングを本日から開始した。

「FES Watch U」

FES WATCH第2弾は、より時計らしいスタイリングに

Fashion Entertainmentsプロジェクト リーダー 杉上雄紀氏

Fashion Entertainmentsプロジェクト(以下、FESプロジェクト)のリーダーである杉上雄紀氏は、「FES Watch U」を身につけて記者発表の場に現れた。前機種の「FES WATCH」と比較するとひとまわり小さくなり、文字盤にガラスやステンレスケースが採用されたことで、より「時計らしい」スタイリングとなっている。

前機種からハード面で変更された点としては、ボタン電池での駆動から、内蔵リチウムイオン電池を充電して用いる昨今のガジェットと同様の仕様になっているほか、防水機能も追加。加えて、サファイアガラスを採用し、表面にイオンプレーティング加工を施したハイエンドモデル「PREMIUM BLACK」(支援額5万9,940円)のほか、「SILVER」、「WHITE」(支援額4万9,680円)の3モデルでの展開となった。

「SILVER」モデル

着用イメージ

そして、「FES Watch U」では「時計の柄を変える」というメインの機能を進化させ、プリセットのデザイン(12種)に加え、スマートフォンアプリから好みのデザインを追加購入可能なプラットフォームを展開する(iOS版アプリでの提供を予定、Androidアプリ対応は検討中)。腕時計型のアクティブマトリクス方式フレキシブル電子ペーパーを組み込んだ製品を実用化したのは、世界で初めてとのこと(ソニー調べ)。

スマートフォン経由で追加で好みのデザインを購入し、柄を変えることができる

銀座・ソニービル内「ソニーイノベーションラウンジ」では、「FES Watch U」のデザイン変更を体験可能な展示がされている

電子ペーパーは「柄の変わる布」

ファッションとデジタルというふたつの領域を掛け合わせるプロジェクト、その始動のきっかけは「TGC」と「TGC」、文字列は似ているが内容のまったく異なるふたつのイベントにあったという。

2012年、当時の業務の一環として「TGC=東京ゲームショウ」会場を訪れた杉上氏は、少し前の時代まではトランプ・花札なども含まれていたゲームというジャンルがビデオゲーム一色に「デジタル化」され、多くの人の注目を集めていることを実感したという。

FESプロジェクトのロードマップ

日をまたいで「TGC=東京ガールズコレクション」の模様をテレビ越しに見た同氏は、会場の盛り上がりを見て、"人々が熱狂しているが、まだデジタルな要素が入っていないもの"として、ファッションはデジタル化する余地があると考え、これが同プロジェクト発足の芽となったそうだ。

そして、FESプロジェクトでは電子ペーパーを紙の代替品ではなく「柄の変わる布」と捉え、ファッションの素材として活用する方針であると説明した。この試みを体現するプレゼンテーションとして、銀座のソニービル内「ソニーイノベーションラウンジ」では、電子ペーパーを活用したバッグやメガネのコンセプトモデルや、電子ペーパーを素材としたテキスタイル表現が展示されている。

FESプロジェクトが思い描く"2020年のブティック"を表現するコンセプト展示「eBoutique 2020」

「eBoutique 2020」展示の一部。電子ペーパーで印象を2WAYで変えられるバッグ

「eBoutique 2020」展示の一部。カラー電子ペーパーを用いたテキスタイル表現

データを「着替える」世界

登壇したクリエイターと、リーダーの杉上氏。左から、TAKT PROJECT代表・吉泉聡氏、CEKAI Tokyo代表・安田昴弘氏、FESプロジェクト・杉上氏、Bob Foundation 朝倉充展氏、同・朝倉洋美氏

「FES Watch U」の追加デザインデータは、気鋭のクリエイターとのコラボレーションで順次追加されていく。記者会見の場では、デザインデータの作り手として参加予定のクリエイターの中から、TAKT PROJECT、CEKAI Tokyo、Bob Foundationの3組・計4名が杉上氏と語るクリエイタートークが展開された。

TAKT PROJECT代表・吉泉聡氏。2015年のグッドデザイン大賞を受賞した「WHILL Model A」のデザインを担当するなど、多彩な分野で活躍している

追加データの作成はこれからということで、この場では参加クリエイターの活動内容の紹介や、電子ペーパーという素材への取り組みについてのコメントが中心となった。前機種の開発にも携わったTAKT PROJECT代表・吉泉聡氏は、「2016年の時点ではデジタル×ファッションという言い方だが、これから『FES Watch U』がリリースされて日常に入っていき、選択肢のひとつとしてこういう"着替え方"がある世界を早く見てみたい」と期待感をあらわにした。

なお、「FES Watch U」は本日から実機の展示が順次開始されていく。都内ではソニーイノベーションラウンジ(8月29日~10月7日)、MoMA DESIGN STORE表参道店(8月29日~9月15日)で一定期間展示されるほか、ソニーストア名古屋(9月22日)、ソニーストア大阪(9月24日)では開発者トークイベントを含む展示機会が設けられるということだ。