全日本空輸(ANA)とJSRは8月29日、SHCデザインが製作する「3Dプリント義足」を共同開発し、今後実用化に向けて支援していくと発表した。
世界で義足を必要としている患者は1700万人いると推定されているが、一般的な金属を用いた義足は単価30~40万円と効果なため、わずかな人しか購入できない。また、義足に使用されている金属の錆を敬遠して海辺に近寄れなかったり、空港の保安検査場では義足の金属部品がセンサーに反応するため、係員による触手検査を受ける必要があるなどの課題がある。
SHCデサインはこうした国内外の義足歩行者が抱えるトラブルを解決するため、2015年に3Dプリント義足の開発をスタート。JSRが開発した3Dプリント用素材「FABRIAL R」シリーズを使用して、2017年度の販売開始を目指している。同義足は3種のプラスチック材料というシンプルな構成で、製造原価は一般的な義足の20~30%程度。金属を含まないため従来の義足に比べ軽いという。
「FABRIAL R」シリーズは、JSR独自のポリマー技術を活かして開発された3Dプリンタ用フィラメント材料。医療分野も含めたさまざまな産業で利用実績がある材料をベースに開発され、「やわらかくしなやか」という特性を持つ。また、直接肌に触れる素材として、皮膚刺激性テスト(ISO 10993-10準拠)による安全性も確認されている。
なお、ANAは同開発において、義足歩行社員による検証と技術的アドバイス、空港でのサービス提供検証、SHCデザインの事業展開時の渡航支援などの協力を行う。