東北大学とダイセルは8月25日、バイオマスから生産される糖アルコールを水素還元し、炭素-炭素二重結合を含む化学原料に高収率で変換する触媒を開発したと発表した。
同成果は、東北大学大学院工学研究科 中川善直准教授、冨重圭一教授らの研究グループによるもので、8月23日付けの米国科学誌「ACS Catalysis」電子版に掲載された。
バイオマスから誘導される化合物は、グリセリンなど糖アルコールを代表に水酸基を多数含むものが多いのに対し、石油化学において重要な化学原料はブタジエンを代表に炭素-炭素二重結合を含むものが多い。そのため、水酸基の炭素-炭素二重結合への変換はバイオマスの化学原料への利用において重要な技術となる。
今回、同研究グループは、石油化学にて合成・使用されているアリルアルコールとブタジエンを合成ターゲットとし、バイオディーゼル燃料の副産物として大量に得られるグリセリンと、甘味料として用いられるエリスリトールを変換した。
触媒には、活性金属であるレニウムと添加剤である金を酸化セリウムに担持したものを使用。レニウムは原子レベルで高分散に担持され、金はナノメートルサイズの微粒子として担持されている。同触媒をグリセリンまたはエリスリトールの1,4-ジオキサン溶液に加え、80気圧の水素で加圧して140℃で反応させた結果、アリルアルコールが収率91%、ブタジエンが83%の収率で得られたという。
このように高性能が得られたのは、同触媒において活性点であるレニウムが高分散に酸化セリウム上に担持されていることと、添加剤の金が効率的に還元剤の水素を活性化し、かつ金がほかの貴金属と異なり生成物中の炭素-炭素二重結合の水素化などの副反応を起こさないことが要因であると同研究グループは考察している。
同研究グループは今後、共同研究先のダイセルと協力し、工業化に向けた研究を続けていくとしている。