東京大学(東大)は8月24日、イプシロン型-酸化鉄(ε-Fe2O3)ナノ磁性体の鉄イオンを複数の金属イオンで置換した新型ナノ磁性粉を開発し、生産用実機を用いて塗布型磁気記録媒体(磁気テープ)の開発品を作製したと発表した。
同成果は、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 大越慎一教授、生井飛鳥助教らの研究グループによるもので、8月24日付けのドイツ科学誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に掲載された。
今回、同研究グループが開発したナノ磁性粉は、ε-Fe2O3の鉄イオンをガリウムイオン(Ga3+)、チタンイオン(Ti4+)、コバルトイオン(Co2+)で置換したε-Ga0.31Ti0.05Co0.05Fe1.59O3(GTC型イプシロン酸化鉄)。同GTC型イプシロン酸化鉄ナノ磁性粒子では、金属置換量の調整によって磁気記録に適した3kOeの保磁力が実現されており、磁化はε-Fe2O3と比較して44%向上している。
また、同研究グループは、同GTC型イプシロン酸化鉄ナノ磁性粒子の中規模生産(5kg)を行い、磁気テープを試作。同磁気テープは、GTC型イプシロン酸化鉄からなる磁気記録層および非磁性層がベースフィルムの上に形成されており、その裏をバックコートが覆った構造をとっている。磁気記録再生信号は、メタル粉(コバルト鉄ナノ粒子、MP1)に比べて非常にシャープで、かつ媒体のノイズが1/10程度まで低く抑えられており、次世代磁気テープに求められる優れた特性を持つことが明らかになった。
同研究グループは同材料について、大容量データの高密度アーカイブ用の次世代磁気記録材料として期待されると説明している。