エネルギー変換効率が高く生産コストも低い単結晶の太陽電池用シリコンを作製する製法の開発に科学技術振興機構(JST)の研究チームが成功した。メガソーラー向けの太陽電池製造方法の主流になる可能性があるという。研究成果は12日、名古屋市で開かれた関係学会で発表された。
太陽電池は太陽の光エネルギーを電力に変換する。素材はシリコン系、化合物系や有機物系などがあるがシリコン系が多い。シリコン系の中でも単結晶と多結晶のものが多く、単結晶は、変換効率は高いが生産コストも高い。これに対して多結晶は、変換効率は単結晶より低いが、生産性が高い「キャスト成長炉」と呼ばれる炉で作るために生産コストは比較的安い。このため、大量の太陽電池を配置するメガソーラー向けは多結晶が主流だった。
太陽光発電の一層の高効率化と低コスト化が求められる中で文部科学省革新的エネルギー研究開発拠点形成事業(JST受託事業)の中嶋一雄(なかじま かずお)研究チームリーダーらは、従来のキャスト成長炉に独自の工夫を数多く加えて「NOC法」と呼ばれる新しい単結晶を作製する製法を開発した。この製法でつくられた単結晶(p-型シリコン単結晶)は、従来の生産コストが高かった単結晶と同程度の高い変換効率を示し、生産コストも抑えることができたという。
今回成功した作製方法について研究チームは今後、作製規模を拡大するなどして太陽電池用シリコン製造の主流にできる道が開ける、としている。
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