農地利用の最適化と農業委員会法改正を伝える農林水産省のパンフレット

古今東西時代を俯瞰すると、食料や労働を含む枠組みを作り上げ、安定した文化を生み出してきた農業だが、現代の日本では、高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加など様々な要因から、将来のビジョンを描きにくい状況にある。

農業委員会法改正が平成28年4月1日から施行されている。農業委員会法改正では、「農地利用の最適化をより良く果たせるようにする」ために担い手への農地などの利用の集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消、新規参入の促進など、何よりもまず農地利用の最適化を積極的に推進していくことが重要であることを明確化している(6条第2項)。

農林水産省が4月に発表した資料によると、耕作放棄地の増加の理由には、高齢化や後継者不足を筆頭に、傾斜地・湿田など農地の自然的条件なども要因として挙げられている。

断片化したハードディスクのファイルの位置を再配置して、各ファイルの記憶領域ができるかぎり連続した状態にすることで最適化する機能をデフラグと呼ぶが、まだらに点在する農地の状態を再配置し集約することでコスト面や生産性の向上が見込まれる。再生利用可能な農地を農地中間管理機構(農地集積バンク)が借り受け、担い手(法人経営、大規模家族経営、集落営農など)ごとに貸し付けすることで、コストを削減した効率的な運営が期待できる。

農地集約による最適化農地中間管理機構の概要より

集約を行うには、まず農地の状態や状況を把握しなければならない。農業委員会は担い手への農地利用集積面積、遊休農地解消面積、新規参入者数などの具体的な数値目標とその達成に向けた具体的な推進方法を定める必要がある。しかし、方法はいろいろあるのだろうが、どうやって広大なエリアの状況を効率的に把握していけるのだろうか。

パスコ公式Webサイト

5日にパスコが開始した「農地利用状況調査サービス」は、このような農地利用の状況調査や農地管理業務の効率化を人工衛星画像やITの力を使い支援するという。同社は1953年の創業時の地図作りからはじまり、1981年にはGIS(geographic information system)情報の取り扱いを開始。現在では各国の人工衛星の情報や航空写真や航空レーザ計測、ナローマルチビーム探査システムを使った水域での深浅測量など空間情報の分析を追求し、防災から物流、マーケティングなど様々な分野でのビジネスを展開し、クラウドで情報を提供するGISクラウドや業界ごとのエリアマーケティングソリューションまで数多くのシステムを提供している。

今回、同社が発表した「農地利用状況調査サービス」では、定期的に周回する人工衛星からの2時期の画像(1.5m解像度)と農地地番図の2つの情報を基礎資料として、農地の利用状況を把握。作付け前後の状況を比較して農地利用マップを自動作成できる。また、リモートセンシング技術を使い、植物の有無や植物の活性を示す葉色マップなど複数の農作物を含む植物の強調表示で広大なエリアの状態を把握できるようになる。

「農地利用状況調査サービス」で提供される図面例

解析画像例(近赤外画像)。直物の緑葉が近赤域の波長を強く反射する光の特性を利用した比較。(同社資料より)

解析画像例(葉色マップ画像)。近赤外域と赤色域の反射率を解析し、植物の活性を示す(同社資料より)

日本にある農地の状況をつぶさに把握しながら、改善できることは改善し、最適化を粘り強く進めていくことが、将来のビジョンを躍動的に描くことが可能な日本の農業へと繋がっていってほしいと願ってやまない。