京都大学(京大)は8月4日、ニホンザルの赤ちゃんに自発的微笑が見られることを確認したと発表した。
同成果は、京都大学霊長類研究所 川上文人研究員、友永雅己教授、鈴木樹理准教授らの研究グループによるもので、8月3日付けの国際科学誌「Primates」に掲載された。
睡眠中の自発的微笑は、"笑顔の起源"とされており、生まれた直後から生後2、3カ月までのヒトの乳児だけが見せるものと考えられてきた。しかし、近年の研究から、ヒトは胎児期から少なくとも1歳過ぎまで自発的微笑を見せることがわかっており、さらにヒトに最も近い種であるチンパンジーの赤ちゃんにも自発的微笑が見られることが明らかになってきている。
今回、同研究グループは、生後4日から21日齢の7個体のニホンザルの赤ちゃんについてそれぞれ2回ずつ1回1時間程度、安静な状態の下で観察を行い、そのときに偶発的に見られた合計93分の睡眠をビデオで撮影。この結果、すべての赤ちゃんは少なくとも1回、合計58回の自発的微笑を見せた。なお、微笑の頻度や継続時間に日齢や体重の影響は見られなかったという。
また、ヒトとチンパンジーによる自発的微笑と比較したところ、ヒト、チンパンジー、ニホンザルにおけるすべての自発的微笑は、浅い眠りの状態である不規則睡眠中に見られること、また、ヒトおよびニホンザルの生後1カ月までの新生児期は、自発的微笑が頬の片側に見られることが多いという類似点が明らかになった。
一方で、ヒトの赤ちゃんと比べて、微笑の形が最も強くなるまでに要する時間がニホンザルのほうが短く、より引きつったように見えるという違いや、チンパンジーと比べてニホンザルの方が観察時間あたりの微笑の頻度が多いという違いが見られた。
チンパンジーやニホンザルの自発的微笑は、恐れや相手に対する服従を意味する表情(グリメイス)を作る際に必要な頬の筋肉の発達を促している可能性があると、同研究グループは考察している。グリメイスは、その形状の類似と、他者との関係を平穏に保つという機能から、ヒトの笑顔の進化的起源のひとつであるという議論があるため、同研究グループは今回の結果について、自発的微笑が、ヒトの笑顔やそれと進化的に関わる表情の発達的起源として機能している可能性を示唆したものであると説明している。