高松市では2016年4月1日から観光情報を発信するデジタルサイネージの稼働が始まった。設置場所は市への入口となるJR高松駅や高松空港、および高松湊にある玉藻地区フェリー乗り場と、市内の交通を担う「ことでん」こと高松琴平電気鉄道の瓦町駅、四国地方で元も高い高層ビルである高松シンボルタワーの5カ所だ。
大きな筐体に埋め込まれた55型の縦型ディスプレイはタッチパネル式で、利用者が直接画面に触って情報を呼び出せるようになっている。また、6言語の表示に対応し、表示された情報を手元のスマートフォンで持ち出せる機能も用意するなど、外国人観光客の満足度向上や回遊・滞在型観光を推進するつくりになっている。このデジタルサイネージソリューションを構築したのが、NECのSI・サービス市場開発本部だ。
「元々は高松市がインバウンドの拡大を目的として公募していた案件で、当初は市内3カ所程度に設置したい、多言語で表示したいというような要望でした。これにNEC側から具体的な設置場所等を含めて提案しました」と語るのは、NEC SI・サービス市場開発本部 コンテンツソリューショングループ 主任の今村圭一氏だ。
デジタルサイネージの活用について提案して欲しいという要望を受けて、国内外からの観光客に対する有効な見せ方や設置場所、ハードウェアの仕様といった部分から検討し、提案を行った結果採用されたという。
「ことでん」のICカードをかざすだけで6言語を切替え表示
ハードウェア的な仕様として要求されたのは、見た目として安っぽくない筐体と、正面だけでなく左右どちらから近づいてきても観光案内を行うデジタルサイネージが存在することを認識できるような設置方法だったという。これに対してNECは、角を丸めて作った大型筐体に55型ディスプレイを埋め込み、左右側面にも案内表示を行った。
多言語対応の場合は日英中韓の4カ国語対応とすることが多いが、中国語を簡体字と繁体字の双方に対応とし、瀬戸内芸術祭なども開催してアートの街としてアピールしている高松市の特性を鑑みてフランス語も入れた6言語対応とした。また設置場所についても当初は商店街などを検討したが、設置場所等を考え合わせて当初予定より多い5カ所への設置となった。設置場所に有線で回線を敷設することは負担が大きいため、NECが提供しているデュアルモバイル回線「Mobile Cloud」を利用。将来的に設置場所の変更なども柔軟に行える仕組みだ。
さらに「ことでん」で利用できるIC乗車券「IruCa」と連動して、ユーザーに合わせた言語表示に切り替わる機能も組み込んだ。ユーザーが画面横のリーダー部分にカードをかざすと、画面をタッチする前に指定言語に表示が切り替わるようになっている。
「NECは顔認証の技術も持っていますし、いろいろな技術の利用を考えました。ICカードにしたのは、総務省が2020年に向けてデジタルサイネージの活用ということで挙げている項目の中にICカード連携があったので、いち早くそれを具現化しようとしたものです」と今村氏。
具体的には、あらかじめ6言語の属性をシリアル番号に割り振ったカードを用意し、言語を指定してユーザーが購入することになる。券面デザインを観光地の写真などを使って行う季節カードとして販売。デポジットの500円とあらかじめチャージされている1500円分の、2000円で購入して利用できるのは一般的な交通系ICカードと同じだ。
「1日フリーパスなどもあるので購入者がどのくらいいるのかは謎でしたが、最初に1000枚用意した後、すぐに500枚追加することになったと聞いています。私自身、海外で交通カードを利用して使った後で記念の土産にしたことがありますが、同じように思い出の品として持ち帰ってもらえるのではないかと考えています」と今村氏は語る。