岐阜大学は8月3日、液中のpHに依存して蛍光色が変化する蛍光物質を開発したと発表した。

同成果は、岐阜大学工学部化学・生命工学科 村井利昭教授らの研究グループによるもので、8月2日付けの科学誌「ChemistryOpen」オンライン版に掲載された。

同研究グループはこれまでに、硫黄原子と複数の窒素原子を導入した低分子有機化合物群「アミノチアゾール」の合成研究を展開してきており、そのなかで五員環の特定の位置に窒素原子を導入した新たな化合物が、蛍光を示すことを見出していた。また、同化合物に異なる置換基や元素を組込むことで、発光色を青色から赤色まで制御できることも明らかにしている。

今回の研究では、同蛍光化合物の特定の部位に塩基性官能基を導入することで、単一の蛍光発光分子でありながら、酸の添加という操作により発光色を微調整し、多彩な発光を実現できる系を構築した。

この系では、青色蛍光化合物に塩酸を加えていくと、青色の蛍光が徐々に消え、代わりに黄色の蛍光を示す。酸の選択によっても蛍光色が異なるため、ある特定の酸との混合比を調整し、青色と橙色の発光を調節することで単一分子からなる白色発光も実現している。なお、同青色蛍光化合物の蛍光は、酸と塩基の中和反応に由来するため、酸を加えて発光色を作成した後に塩基を加えると、もとの青色発光色が再現される。

同研究グループは今後、この化合物の水への可溶化や有機フィルム内への固定化が成功すれば、有機ELディスプレイや化学センサチップなど幅広い用途への応用が期待されるとしている。

青色の蛍光発光化合物に酸を加えたときの発光色の変化。はじめの青色が徐々に薄くなっておよそ3当量加えた時点で白色になり、さらに酸を加えると橙色に変化している