新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が橋梁点検ロボットの実証実験をこのほど、神奈川県川崎市内でロボット開発企業などと合同で実施した。実験は順調に進み、計画どおり終了した。橋梁やトンネルなどの社会インフラは今後多くが老朽化するため、その対応策が重要課題になっている。専門知識を持つ人材の不足も指摘される中でこうしたインフラ用の点検ロボットの開発や活躍が期待されている。

写真 実証実験中の橋梁近接目視代替ロボット(提供 NEDO、イクシスリサーチ社)

NEDOは2014年度から「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」を開始し、橋梁やトンネルなどで作業者も立ち入り困難な場所に移動して維持管理に必要なデータを効率的に収集できるロボットの研究開発を推進してきた。

今回NEDOとロボットを開発したイクシスリサーチ社(本社・川崎市幸区)は橋梁点検ロボットの実証実験を川崎市中原区内の道路橋で川崎市などの協力を得て実施した。実験では、橋桁に吊り下がった「橋梁近接目視代替ロボット」が実験担当者の遠隔操作通りに橋桁下を移動し、ロボットに搭載された「ステレオカメラ(複眼式撮像装置)」(富士フイルム開発)が橋桁の指定場所を撮影し、損傷部分を検出することができた。撮影映像は地上でモニターでき、作業者でもかなり近くで目視しなければ見つからない損傷部分が確認できた、という。

今回の実証実験結果を受けNEDOと同社は、今後ロボットを改良し早期の実用化を目指す。NEDOは実用化により、これまで必要だった点検用の足場設置や高所作業車配置などの手間とコストを省ける上、橋上の交通規制も最小限にできるため橋梁維持管理の効率化が期待できる、としている。

日本は道路や橋梁、トンネルなど社会インフラの老朽化が進む一方、厳しい財政状況や熟練技術者の減少という難題に直面している。橋梁点検ロボットの開発はNEDO以外の研究プロジェクトでも進められている。

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