最近、ソフトウェア開発の場面で「GitHub」という言葉を耳にする機会が増えている。GitHubはソフトウェア開発プロジェクトのための共有サービスで、コラボレーション、コードレビュー、バージョン管理が行える。
日本では2015年、国外初の支社であるGitHub Japanが設立されるなど、着実に成長を遂げている。今回、GitHub Japanのカントリーマネージャーを務める藤田純氏に話を聞いた。
藤田氏はモトローラで携帯インフラ研究開発部門のソフトウェアエンジニアとしてキャリアを開始した後、SAPなどでコンサルティング、Microsoftでエンタープライズ・セールスエクセレンス部門のプログラム・マネージャーを経て、Appirio Japanでカントリーマネージャーに就任し、現在に至る。
足りない部分はサードパーティと連携
Microsoftをはじめ、これまで主にプロプライエタリのソフトウェアを提供してきた企業が、自社の重要な技術の一部、またはすべてをオープンソースソフトウェアとして公開する取り組みが活発になっている。開発をオープンソース・ソフトウェアのエコシステムに乗せることでシェアの拡大を図ったり、専門家などからの意見を積極的に取り込んだりすることを狙っているのだ。こうした場合にソースコードをホスティングするプラットフォームとして「GitHub」はよく使われている。
オープンソース・ソフトウェアに詳しいデベロッパーであれば、最近登場したプロジェクトの多くがGitHubを使っていることを知っているだろう。「新しいものを開発したら、GitHubにアップロードして他のデベロッパーやユーザーと共有する」というのが、最近の開発現場のトレンドだ。
実のところ、GitHub以外にも、オープンソース・プロジェクトのホスティング・サービスまたはバージョン管理システムサービスはいくつもある。そんな中、GitHubは着実に人気を伸ばしてきた。
GitHubの成功理由はいくつもあるだろうが、藤田氏のこの言葉に象徴されていると思う。
「より多くの方が簡単に開発できることを支援したい――そうした目的の中で開発されてきたのがGitHub。そこには、バージョン管理だけではなく、ソフトウェア開発をより簡単にするという仕組みがあり、バージョン管理は機能の1つでしかない。そして、われわれは開発する部分を絞っている。足りない部分は自社でまかなうのではなく、サードパーティと連携することで補っていく」
日本でも大手企業での導入が進む
便利なオープンソースとして名が通っているGitHubだが、本稿では、企業で仕事の道具としても利用できるツールとしての側面も紹介しておきたい。
Googleをはじめ、さまざまなITベンダーが新しいサービスを続々とリリースする昨今、ツールの利便性はエンタープライズで使われているものよりも、コンシューマーで使われているものの方がハイレベルという状況が生まれている。プライベートで便利なツールを使いながらも、会社では使いにくい古いソフトウェアを使わなければならない。そういうシーンが増えてしまった。
一度GitHubの利便性を覚えてしまったデベロッパーが、会社で古いバージョン管理システムを使いたがるかと言えば、それはノーだ。不便なものは嫌だ。仕事でもGitHubが使いたい。GitHubはこうしたユーザー向けに(企業向けと個人向けがある)有償でサービスを提供している。
GitHub Japanは「GitHub」の有償プランを販売するとともに、日本語でのサポート提供の準備を進めている。GitHubにとって、日本は米国に次ぐ第2位の位置づけにあるという。国内でも企業における導入が進んでおり、ディー・エヌ・エー、LINE、ヤフー、サイバーエージェント、クックパッド、グリー、日立システムズで採用されている。
今後、国内のオープンソース・ソフトウェアのユーザーコミュニティと関係を深めるなどして、日本における認知度を高めていく計画だ。
ソースコードを公開したくない場合は有償プランの利用を
GitHubを利用するにあたっては、成果物をオープンソース・ソフトウェアとして一般に公開すれば料金を支払う必要はない。GitHubはオープンソースを使ったサービスだから、開発対象がオープンソースなら対価は要求しない。それがオープンソースへのお返しというわけだ。ただし、GitHubは利用したいが公開はしないで使いたい、という場合だけ有償となる。
GitHubのは有償プランとして「Personal」「Organization」「Enterprise」が用意されている。個人利用の「「Personal」は月額7ドル、グループ利用の「Organization」が月額25ドルから(5ユーザーまで、それ以降は1人に付き月額9ドル追加)、オンプレミスとして利用する「Enterprise」の価格は相談となる。
GitHub.comの支払いはクレジットカードだが、GitHub Enterpriseの支払い方法はGitHub.comと異なるため、日本法人に相談してみるとよいだろう。日本人スタッフに日本語で相談できるので、英語が苦手な日本のビジネスマンにとって力強い味方になってくれるはずだ。