IDC Japanは7月28日、国内3Dプリンティング市場の2015年実績と2020年までの予測を発表した。都内で行われたメディア向け説明会では、同社のイメージング、プリンティング&ドキュメントソリューションマーケットのアナリストである菊池敦氏が同予測について語った。

IDC イメージング、プリンティング&ドキュメントソリューションマーケット アナリスト 菊池敦氏

菊池氏は「3Dプリンティング市場」を3Dプリンタ本体、3Dプリンティング関連サービス(3次元受託造形サービスとプリンタの保守サービス)、造形材料を合わせたものとして定義。また、3Dプリンタ本体については平均販売価格が50万円未満のデスクトップと、50万円以上のプロフェッショナルに分類しており、プロフェッショナルは平均販売価格が3000万円未満のスタンダードと、同3000万円以上のプロダクションにさらに細分化して分析している。これは、デスクトップとプロフェッショナルでは販売経路、用途、サイズ、ユーザーが異なるため。

2015年は3Dプリンタ本体が大苦戦

この前提のもと、菊池氏はまず国内3Dプリンティング市場の2015年実績を紹介。まず、3Dプリンタ本体の出荷台数をみると、2015年は2014年から20.2%ダウンとなる7952台だった。また、3Dプリンタ本体の売上額は、前年比32.5%ダウンとなる141億円となった。2014年は台数で2013年に比べて2.6倍、売上額で1.8倍の成長を見せていただけに一気にトーンダウンした格好だ。

2013年~2015年の国内3Dプリンタ本体の出荷台数(左)および売上額 (資料:IDC Japan)

3Dプリンタ本体の苦戦とは対照的に2015年の3Dプリンティング関連サービスは売上額で前年比2.2倍に成長。3D造形サービスを提供するサービスビューローの認知が拡大して、企業の利用が増加したという。また、各ベンダーが本体の保守/修理費を設置の翌年から発生させるビジネスモデルを採用しており、2014年の導入台数が多かったことから、2015年に保守/修理費が上乗せされた。また、造形材料も2014年に比べて2.6倍に増加し、菊池氏は「試作用途で企業ユーザー、サービスビューローの材料消費量が増えた結果だ」とした。

2013年~2015年の国内3Dプリンティング関連サービス(左)と造形材料の売上額 (2015年までは実績値 資料:IDC Japan)

今後は成長傾向と予測 - デスクトップは冬の時代到来か

今後について菊池氏は、デスクトップ3Dプリンタは市場が縮小すると予測。「デスクトップは2013年から2014年にかけて過熱気味だった。造形物の限界がわかって、3Dプリンタに対する期待の反動が現れた。これから先は伸びていく要素よりもマイナスの要因が多く、減少に向かうと見ている。2016年は各社が年頭に出した製品があるため上積みがあるが、5年間は減っていく」(同氏)

一方、同じく出荷台数では苦戦を強いられているプロフェッショナルについては、着実に応用範囲を広げていることに加え、置き替え需要も見込めるため今後も成長するとした。

2020年までのデスクトップ3Dプリンタ(左)とプロフェッショナル3Dプリンタの出荷台数予測(2015年までは実績値 資料:IDC Japan)

3Dプリンティング関連サービスについて同氏は3D造形サービスに対して継続的な需要が期待できるとポジティブな見解を示したほか、造形材料についても市場は拡大傾向にあり、国内3Dプリンティング市場自体は2020年までに700億円規模に成長すると予測した。

2020年までの国内3Dプリンティング市場の売上額予測 (2015年までは実績値 資料:IDC Japan)

また菊池氏は、医療分野で先進的な事例がある造形材料市場の成長と、フルカラーでの造形が可能な機種が発表され、HPやキヤノンなど2Dのプリンタメーカーがノウハウを有しているインクジェット方式3Dプリンタの進歩と出荷の伸びを今後の注目ポイントとして挙げた。