日本IBMは7月25日、Watson IoT事業のビジネス戦略に関する説明会を開催した。同社は今年3月に、WatsonとIoTを連携させたソリューションを開発するWatson IoT事業部を新設した。
Watson IoT事業部長の林健一郎氏は、初めに「IDCの調査結果によると、国内のIoT市場規模は、2014年が5.4兆円であるのに対し、2020年には13.8兆円になることが見込まれる。13.8兆円という数字は現在のITサービスの市場規模に相当するもの」と、国内IoT市場の成長性をアピールした。
同社は、PaaSであるIBM Bluemix上でIoT向けクラウドサービス「Watson IoT Platform」を提供しているが、さらにWatson IoT Platformで業界に特化したソリューションを提供していく。
自動車業界向けには「IoT for Automotive」、エレクトロニクス業界向けには「IoT for Electronics」、保険業界向けには「IoT for Insurance」、産業機器向けに「IoT for Industry Products」、小売業界向けには「IoT for Retail」、通信業界向けには「IoT for Telecom」を提供する。
これらのうち、「IoT for Automotive」が今年5月に一部の機能が選考リリースされており、「IoT for Electronics」のベータ版がリリースされている。
「IoT for Automotive」は「リアルタイムで車両と環境の認識」「動的な地図の管理」「道路網の管理」「アナリティクス」などの機能を備えており、現時点では、運転車の行動を取得する機能とコンテンツをマッピングする機能がリリースされている。
同日、アルパインの車載機器と「Watson IoT for Automotive」を基盤技術として利用し、多様でダイナミックな情報を活用しながら、ドライバーや同乗者に合わせて快適なドライブを提供するシステムの開発に着手したことが発表された。
同システムでは、ドライバーの運転志向・傾向にあった経路を学習してルートを案内するほか、ソーシャル情報や嗜好を分析して経由地/目的地を提案するといった活用も検討されている。
林氏は、Watson IoT Platformの強みとして「ネットワーク・エッジ」「Watsonとの連携」「ブロックチェーン技術の活用」「ウェザーデータの活用」の4点を挙げた。
「ネットワーク・エッジ」については、シスコシステムズと協業することで、シスコのルータにIBMのWatsonテクノロジーをビルトインすることで、ネットワーク・エッジに関する重要なデータへの理解を深めて行動することが可能になる。
また、Watson IoT Platformではブロックチェーンの技術を活用してデバイス管理を行うことでデバイスの一意性を実現するとともに、同社がWeather Companyを買収したことで、さまざまなデータ分析に影響を与える天気のデータを活用することができる。
さらに、林氏は「IoTにおいては基幹システムとの連携も重要になってくるが、Watson IoT PlatformではMaximoやRationalのAPIを提供しており、エンドツーエンドでサポートできる。これも、われわれの強みだ」と語った。
続いて、同日より開始した「IBM Watson IoT Platform」を活用するビジネスパートナーとのエコシステムを構築するプログラム「Watson IoT Platform パートナーエコシステム」が紹介された。
同プログラムは、「Watson IoT Platform」を活用し、ハードウェア、ソフトウェア、クラウド、インテグレーションなどのIoT ビジネスを展開しているビジネスパートナーを対象としており、リコーや京セラ、三菱電機など17社が参加を表明している。
林氏は「われわれとパートナーにとどまらず、パートナー同士のソリューションを連携させて、これまでにない新たなIoTソリューションを展開していきたい」と述べた。
アマゾン ウェブ サービス(AWS)やマイクロソフトも既にクラウドベースのIoTプラットフォームを提供しているが、こうしたサービスについて林氏は「データの収集という点では競合になりうるが、データを分析するソリューションまで含めると、われわれが有利。また、他のサービスはインダストリーに特化したサービスを明確にしていないので、その点でもWatson IoT Platformはアドバンテージがある」と語った。