光産業創成大学院大学、トヨタ自動車、浜松ホトニクス(浜ホト)らは7月26日、核融合燃料に対向して設置したレーザーから強度を変えて3段階で対向2ビーム照射することで、効率のよい核融合燃料の加熱機構を発見したと発表した。

同成果は、光産業創成大学院大学、トヨタ自動車先端材料技術部、浜松ホトニクス中央研究所、豊田中央研究所、名古屋大学未来社会創造機構、レーザー技術総合研究所、米国ネバダ大学リノ校、産業技術総合研究所らの研究グループによるもので、7月28日付けの米国科学誌「Physical Review Letters」に掲載される予定。

核融合を人工的に起こすには、磁場を用いる方法とレーザー光を用いる方法が提案されている。今回の研究では、レーザー光を用いる方法のひとつであり、核融合燃料の圧縮によるコアの形成後にヒーターパルスレーザーでコアの加熱を行う「高速点火方式」を採用。

まず、直径500μm、殻の厚み7μmの球殻状の核融合燃料に、ピーク強度3000億W/cm2、パルス幅25.2ナノ秒のフットパルスレーザーを対向2ビーム照射することで、核融合燃料を内向きに加速。次に、加速された核融合燃料に、ピーク強度21兆W/cm2、パルス幅300ピコ秒のスパイクパルスレーザーを対向2ビーム照射し、中心部に押し込んでコアを形成した。

そして、形成されたコアに、ピーク強度670京W/cm2、パルス幅110フェムト秒のヒーターパルスレーザーを対向2ビーム照射してコアを加熱、発光させたところ、発光はスパイクパルスレーザー照射後の状態と比較して6倍以上にも増大していたという。

コアの密度が高くなると、磁場をつくるための電流が、コアの電子およびイオンとの衝突でかき消されてしまうため、将来のレーザー核融合の実現に向けてコアがより高密度化されると上記の加熱機構は機能しないとされていたが、同発見により、高密度なコアでも、対向の高速電子流が交差すると、磁場が形成されて同加熱機構が維持されることが明らかになった。

同研究グループは、同加熱機構について、コンパクトなレーザー核融合施設でのレーザー核融合実用化が期待できることを示したものであるとしており、今後は、コンパクトな装置でのコア加熱の効率化、レーザーの大出力化を進めていく考えだ。

3段階の対向2ビーム照射のイメージ