情報通信研究機構(NICT)と産業技術総合研究所(産総研)は7月25日、制御用の電波が直接届かない場所にあるロボットを、他のロボットを経由して遠隔制御する技術を開発したと発表した。
広い範囲にわたって移動しながら活動するロボットを操縦者が遠隔制御するためには、多くの場合、電波による無線通信が用いられる。しかしながら、厚い壁、建物、樹木などといった障害物の反対側(見通し外)にロボットが回り込んだ場合、電波が遮られて通信が切れ、ロボットの遠隔制御ができなくなるうえ、ロボット側から送られてくる位置や姿勢などのデータも届かなくなってしまうという課題がある。
今回両者は、既存の通信方式を根本から見直し、ロボットの制御用であることに特化し、中継伝送することを前提として、応答遅延時間が小さく、かつ、通信信号同士が互いに干渉しないことを両立させた新たな通信手順(アクセス制御プロトコル)を設計・開発。
同技術を用い、操縦者とロボットが見通し外の位置関係であっても、無線が同時に複数局に対して送信する性質を活用し、制御データおよびテレメトリデータを、中継局を経由する複数の通信経路によって冗長性を持たせて伝送することで、ロボットを途切れなく遠隔制御することが可能になった。
また、従来の通信方式では主に端末の位置が固定、あるいはあまり頻繁には動かない場合を前提としており、時間がかかっても必要なデータをすべて送るために、通信開始前に中継経路の探索や設定などが行われいたが、同技術ではこの手順をなくし、移動する端末を対象とした制御用として単純化した。
これにより、これまで条件によって数十ミリ秒~数百ミリ秒まで変動していた中継局経由の応答遅延時間を、今回の開発装置では制御データの送信周期である50ミリ秒以内に抑え、制御の不安定化の回避を可能にするとともに、中継経路がロボットの移動によって変更された際に発生する通信の切断をなくすことを実現している。
また両者は、同技術を搭載した試作装置を用い、屋外におけるフィールド実証実験を実施。操縦者から見て見通し外にある小型四輪ロボットの安定な遠隔制御およびそのテレメトリ信号受信の実証に成功した。中継装置はドローンに搭載し、上空高度約20m~30mでホバリングさせ、これを経由して小型四輪ロボットへの無線通信回線を構成した。
両者は今後、制御対象を飛行するドローンに拡張する予定であるとしている。