東京大学(東大)などは7月22日、太平洋・インド洋の深海堆積物の化学組成データを統計的に解析し、レアアース泥の生成が堆積速度に支配されていることを明らかにしたと発表した。
同成果は、東京大学大学院工学系研究科 加藤泰浩教授、安川和考助教、中村謙太郎准教授、千葉工業大学次世代海洋資源研究センター 藤永公一郎上席研究員、海洋研究開発機構地球内部物質循環研究分野 岩森光分野長らの研究グループによるもので、7月22日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
加藤教授らはこれまでに、レアアースを高濃度で含む深海堆積物「レアアース泥」が太平洋の深海底に広く分布することを発見していた。今回、同研究グループは、太平洋およびインド洋の広範囲をカバーする101の地点から採取された3968の深海堆積物資料の化学組成データに対し、独立成分分析と呼ばれる多変量解析手法を適用。同化学組成データから、生物源炭酸カルシウム成分、生物源シリカ(ケイ酸塩)成分、火山起源成分、熱水起源成分、海水起源成分、生物源リン酸カルシウム成分などを統計的に分離・抽出した。
この結果、これらのうちレアアース泥の生成と深く関連しているのは、熱水起源、海水起源、生物源リン酸カルシウムの3成分であることがわかった。これは、濃集したレアアースの究極的な供給源は海水であること、およびレアアースを保持する物質が海水と長期間にわたり接触することでレアアースを多量に取り込み、レアアース泥ができたことを示唆しているといえる。
さらに、簡単な計算によって見積もった結果、総レアアース濃度が1000ppmを超える高品位なレアアース泥の生成に必要な条件のひとつは、100万年あたり0.5m程度しか物質が降り積もらないような、極めて堆積速度の遅い環境であることがわかった。
また、レアアース濃集成分の時空分解変動を可視化した結果、海底鉱物資源の生成は、数千万年という長い時間の中で、大陸の移動や地球の気候・環境変動と密接に連携してきたことも示されている。