慶應義塾大学(慶大)とDNAチップ研究所は7月20日、関節リウマチに対する3種類の生物学的抗リウマチ薬「インフリキシマブ(IFX)」、「トシリズマブ(TCZ)」、「アバタセプト(ABT)」について、その治療効果を予測するバイオマーカーを明らかにしたと発表した。
同成果は、慶應義塾大学医学部内科学(リウマチ)教室 竹内勤教授、鈴木勝也専任講師、埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科 天野宏一教授、DNAチップ研究所らの研究グループによるもので、7月19日付の英国科学誌「Arthritis Research &Therapy」オンライン版に掲載された。
関節リウマチは複雑な免疫反応により生じる病態で、治療に用いられる生物学的抗リウマチ薬は種類が多く、人によって選択した薬の効果に差が生じやすいため、事前に薬剤の効果を予測する検査の実現が望まれていた。
今回、同研究グループは、抗リウマチ薬のひとつであるMTX(メトトレキサート)に治療抵抗性のある関節リウマチ患者のうち、IFX、TCZ、ABTいずれかの投与が決定した患者から同薬投与前の血液を採取し、DNAマイクロアレイ法を用いて遺伝子の発現量を測定。薬剤の効果と関連する発現変動を示す遺伝子群を特定した。なお、薬剤の効果は、治療6カ月後の臨床的疾患活動性指標により評価し、病気の症状がほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態を示す寛解達成群と、そこに至らない非寛解群の遺伝子発現の違いを、発現解析手法のひとつであるGSEA法により検出した。
この結果、IFXの非寛解群では寛解達成群に比べ、炎症やアポトーシスに関連する遺伝子群のひとつであるインフラマソーム遺伝子群の発現が増加。TCZの非寛解群ではB細胞発現遺伝子群の発現が低下、ABTの非寛解群ではNK細胞発現遺伝子群の発現が増加していることが明らかになり、同研究グループは、作用の異なる3つの生物学的製剤の効果と関連する複数遺伝子の発現パターンから構成される薬剤効果指標を見出した。
同研究グループは今後、効果予測の精度を高めるため、大規模な前向き試験により薬効予測バイオマーカーの検証を進める予定であるとしている。