ディー・エヌ・エー(DeNA)とヤマト運輸は7月20日、都内で記者会見を開き、自動運転を活用した次世代物流サービスの開発を目指し、実用実験の実施に向けた計画策定に合意したと発表した。実用実験のプロジェクト名は「ロボネコヤマト」、実施期間は2017年3月からの1年間を予定している。
DeNAは、インターネットサービスの分野で培ったノウハウと自動運転技術を連携させ、新しい道路交通サービスの開発や私有地向けの移動サービスの提供を進めている。一方、ヤマト運輸はライフスタイルの変化などで受け取りのニーズが多様化していることを受け、利用客が望む時に望む場所で受け取れるよう、コンビニエンスストアやオープン型宅配ロッカーなどへ受け取り場所の拡大、クロネコメンバーズを活用した利便性の拡大を進めてきた。
今回、物流領域における自動運転技術の活用を模索していたDeNAと、利用客の生活に寄り添ったサービスを目指すヤマト運輸が協力し、次世代物流サービスの開発を目指したロボネコヤマトプロジェクトを始動することとなった。
実用実験の説明を行ったDeNA 執行役員オートモーティブ事業部長の中島宏氏は「スケジュールとしては2016年度中に実用実験の詳細を策定し、平行して配送ネットワークやシステム構築、配送車両の開発を行い、2017年3月から実用実験を開始する。実用実験は1年間を予定しており、自動運転Lv.3で試験サービスの開始や別のビジネスモデルの事業化に取り組む。最終的には高度な自動運転技術を活用した新たなサービスを検討している。実用実験を行う場所は国家戦略特区の枠組みの活用を計画しており、国内の複数カ所を候補に選定を進めている」と述べた。
同氏は実用実験の内容について「地域・社会に貢献できるサービス構築を行うため、『オンデマンド配送サービス』と『買い物代行サービス』を実施する。オンデマンド配送サービスは多様な生活スタイルに合わせて配送・再配送を行い、一人暮らしや共働き世帯をターゲットにする。一方、買い物代行サービスは地元の商店で一括購入して指定場所まで配送し、ターゲットは子育て中の女性やシニア世代となる」と説明した。
両社が目指す次世代の物流サービスとは
ヤマト運輸 代表取締役社長の長尾裕氏はプロジェクトの開始にあたり「2015年度の宅急便の総数は17億3000万個に達し、近年では宅急便の利用形態が多様化している。宅急便を送る、受け取るというそれぞれの多様なニーズを満たすために、われわれはラストワンマイルのオンデマンド化を推進している。ラストワンマイルのオンデマンド化は指定した時間・場所で、望むものが手に入る世界の実現ということに言い換えることができる。プロジェクトの開始により、従来の自宅を中心とした受け取りから、時間と場所を気にしない物流サービスを実現する」と力を込めた。
また、同氏は「これまでもオープン型宅配ロッカーやSNSのメッセージアプリといったスマートフォンアプリの活用、コンビニエンスストアでの荷物の受け取りなどオンデマンド化に取り組んできた。自動運転技術の利用により、ラストワンマイルのさらなる進化に挑戦し、社会課題の解決にもつなげていきたい。例えば、自動運転技術の活用が進めば、従来はトラックの運転がネックとなっていた女性やシニア層においても宅配業務などに従事する可能性が広がっていくのではないかと考えている」と期待を寄せた。
DeNA 代表取締役社長兼CEOの守安功氏は「自動運転を活用することでヒトやモノなどの移動・輸送が従来と比べて身近、手軽、便利になり、さまざまなことが変化するほか、多様な形態のサービスが生み出されると考えている。われわれが自動運転関連のサービスを実現するにあたり、車両や自動運転技術、インフラなどが必要だ。それらを組み合わせてパッケージとしてエンドユーザーにサービスを提供することを『モビリティサービスプロバイダー』と定義している。既に自動運転技術を活用して、ZMPとロボットタクシー、仏EasyMileとは無人運転バスを使用した運転システムなどに取り組んでいる。ロボネコヤマトプロジェクトでは自動運転技術を活用し、次世代の物流サービスの実現を目指す」と意気込みを語った。
今後、DeNAのIT技術を活用した自動運転関連のサービス設計ノウハウとヤマト運輸の物流ネットワークを組み合わせることで、利便性が高く、自由な生活スタイルを実現する物流サービスを目指すとともに、さまざまな事業者の参画も視野に入れたオープンなプロジェクトとして進めていく方針だ。