理化学研究所(理研)と東京大学(東大)は7月19日、光や湿度の揺らぎをエネルギー源として半永久的に駆動する薄膜アクチュエータを開発したと発表した。
同成果は、理研 創発物性科学研究センター創発ソフトマター機能研究グループ 相田卓三グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)、宮島大吾基礎科学特別研究員、東京大学大学院工学系研究科の大学院生 荒添弘樹氏らの研究グループによるもので、7月18日付の英国科学誌「Nature Materials」オンライン版に掲載された。
湿度に応答し屈伸運動を示す材料は過去にも報告されていたが、その応答は遅く、また高い湿度条件を必要とするため、通常の環境からエネルギーを取り出し駆動させることはできなかった。
従来、湿度に応答する薄膜には、水を吸収しやすい高分子材料が用いられてきたが、同研究グループは逆の発想で、水をほとんど吸収しないグラフィティック・カーボンナイトライドと呼ばれる2次元状高分子材料を薄膜に採用。同高分子材料は、構造の一部に水を吸着する箇所を持っており、薄膜を形成する際に、この高分子の向きを適切に揃えることで、極少量の水分子の吸収で非常に大きな屈伸運動を行う薄膜を実現した。
さらに、同研究グループは、同薄膜の一部に金を蒸着することで、水滴のまわりに起こる湿度の揺らぎを駆動力にし、一方向に歩き続けるアクチュエータの開発にも成功。同薄膜の水分の吸着量は、熱や光にも影響を受けるため、同薄膜においては環境中のさまざまな揺らぎを運動エネルギーに変換することが可能。また、環境の変化に高速で応答することが可能なため、薄膜に強い光を照射することで、薄膜を高速で屈伸、ジャンプさせることもできる。
同研究グループは、今後薄膜の運動エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換する技術を実現することで、実際のデバイスでの利用が期待できると説明している。