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サポート編
7. 造形物は何かに支えられている
造形物と同一材料かそうでないかによらず3Dプリント品は造形中に何らかの物体に支えられています。その支えを何らかの方法で除去したものが皆さんのお手元に届きますが、サポートにはさまざまな種類があります。どのようなサポートがあるか理解していないと「なぜか常に注文をキャンセルされる」や「モデルの中になぜか異物が含まれている」などトラブルの原因になります。これを回避するためにも、サポートには以下のような種類があることを、覚えておきましょう。
・材料パウダー
パウダーをレーザーで焼結し造形する3Dプリンタやバインダーと呼ばれる接着剤で固める3Dプリンタは材料のパウダーそのものがサポート材になります。モデルが造形材料パウダーそのもので支えられているということです。
・材料でできた柱
光硬化樹脂の液槽を紫外線で固める3Dプリンタや金属をレーザー焼結する3Dプリンタは材料で出来た柱を造形することによってモデルを支えます。
・熱で溶けるサポート
モデルよりも低い融点のサポート材でモデル下部を支えます。
・溶剤や水で溶けるサポート
モデル材とは異なる素材でできた液体で溶けるサポート材です。
・セルフサポート
モデルを特定の角度で配置することでモデルそのものをサポートとする方法です。
8. そのモデル、サポート除去できる?
造形サービスから送られてくる3Dプリント品にはサポートが付いていませんが、それは造形サービスのスタッフがサポートを除去しているからです。
サポート除去にはさまざまな手法がありますが、どれも長所と短所があります。
・引きはがす
物理的にはがれやすい構造のサポートを付ける3Dプリンタもしくはサポート材を利用した3Dプリンタでは、サポート材は工具を使用し、力ずくで引き剥がします。よって工具が届かない部分に出来たサポートを除去することは出来ません。
また造形物の厚みが薄いとサポート材を除去している最中に破損してしまう可能性がとても高いです。
・水や溶剤で溶かす
サポート材料として水や溶剤で溶かすことが出来る材料を利用した3Dプリンタの場合はこの方式です。溶剤は基本的に造形物を溶かさないものが多いですが、場合によっては造形物を脆化させることがあります。また水や溶剤はサポート表面しか接触しない為、全て溶かすのには非常に時間がかかります。
・熱で溶かす
熱で溶けるサポート材を利用した3Dプリンタの場合、サポート材が付着したモデルを恒温槽に入れ、時間をかけて融解させます。この除去方法の場合はモデルにも熱が加わる為、造形物が変形しやすいという欠点があります。
・切断する
金属3Dプリンタの場合はサポート材とモデル材は同じ材質になるため、付着したサポートをニッパーやワイヤー放電加工機で切断し切断箇所をリューターなど工具で研磨します。よって工具が届かない部分に出来たサポートを除去することは出来ませんし、サポートが付いた部分は他の部分と表面性状が変わってしまいます。
・エアで吹き飛ばす
パウダーを溶かしたり接着したりする3Dプリンタの場合、造形後に周りに付着するパウダーをエアで除去します。エアが届かない構造になっている場合サポートを除去できません。
多くの場合はサポート除去の時間を短縮する為にこれらの方法を複合して行います。また、もし除去できなければ内部にサポートや造形物の元となる原材料が残ってしまうことになりますので、工具が入らないほど複雑な形状物は内部に不要物が残る可能性があるということを認識しておきましょう。
著者紹介:川岸孝輔(かわぎし こうすけ)
株式会社DMM.com 3Dプリント部門サービスマネージャー
前職は星野楽器株式会社で約9年間にわたって製品企画から外装設計、電子回路設計にコーディングとマルチエンジニアとして働き、複数の製品を世に送り出した。